就業規則の作成と届出のポイントを使用者側専門の弁護士が解説

就業規則の作成と届出のポイント

ビジネス 就業規則は、いわば「会社のルールブック」です。

就業規則は労働紛争を予防するだけでなく、万が一労使間でのトラブルが起きたときには重要な証拠となります。

就業規則を作成していなかったり、就業規則の内容に不備があったような場合、労使間で紛争に発展したときに思わぬ不利益を受けることもあります。

このページでは、就業規則を作成するときのポイントと、就業規則の作成やチェックを弁護士に依頼した方がいい理由についてご説明します。

就業規則とは

就業規則の機能

機能

就業規則とは、労働者が就業上遵守するべき規律や労働条件に関する具体的細目について定められた規則のことをいいます。

就業規則は、従業員の労働条件を明確にし、職場の秩序や規律を守ると同時に、社内のコンプライアンスを徹底させる機能を持っています。

企業のガバナンスにおいて、従業員をどう管理するかは非常に重要な問題です。

就業規則を作成し、運用していくことは、人事管理の第一歩です。

雇用契約書とは何が違う?

就業規則と雇用契約書は、労働者の労働条件が記載された書面という点では同じです。

雇用契約書は、労働者一人ひとりと会社との個別的な労働契約の内容を記載したものです。

一方、就業規則は、従業員と会社との包括的な労働契約である点がポイントです。

就業規則の2つの効力

就業規則には、「労働契約規律効」と「最低基準効」という2つの効力があります。

労働契約規律効とは、「就業規則で定めた労働条件が労働契約の内容となる」という効果です。

たとえば、就業規則に賞与の支払いに関する規定があったら、雇用契約書に賞与に関する規定がなかったとしても、使用者は賞与を支払う義務があります。

最低基準効とは、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効となり、就業規則で定める基準が適用される」という効果です。

たとえば、就業規則に賞与が5か月分と定められていたら、個別の雇用契約書で3か月分と定められていたとしても、使用者は5か月分の賞与を支払う必要があります。

このように、就業規則と雇用契約書との間に矛盾があった場合には、労働者にとって有利な条件が有効とされますので、注意が必要です。

就業規則の作成・届出義務

就業規則の作成と届出が義務付けられている場合

就業規則の作成と届出は、常時10人以上の従業員を使用する使用者に対して義務付けられています。

「常時」とは常態として10人以上の労働者を使用している場合をいい、繁忙期だけ10人を超えるような場合は就業規則の作成・届出義務はありません。

ここでいう労働者にはパートタイマーや契約社員を含みますが、派遣社員や下請会社の労働者は使用者が異なるので含まれません。

常時10人以上の労働者を使用しているかどうかは、「事業場」ごとに判断されます。

たとえば、会社全体では10人以上の労働者を雇用していても、各支店で常時働く従業員が10人未満であれば、就業規則の作成・届出義務はありません。

就業規則がないとどうなる?

では、法律上の義務がなければ就業規則を作成する必要はないかというと、そうではありません。

たとえば、就業規則がないと、労働者が企業秩序を乱すような行為を行ったときに懲戒処分をすることができません

懲戒処分を行うためには、就業規則に懲戒事由と懲戒処分の種類が規定されていることが必要です。

懲戒事由とは、「正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をしたとき」、「正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき」といった懲戒が行われる条件です。

懲戒処分の種類とは、「けん引」、「減給」、「降格」、「出勤停止」、「論旨解雇または論旨退職」、「懲戒解雇」といった懲戒処分の内容です。

懲戒処分について定めた就業規則がないのにもかかわらず懲戒処分を行った場合、その懲戒処分は法的に無効となります。

規模を問わず就業規則は作成するべき

就業規則がないと、年次有給休暇の計画的付与制度など会社にとって利益になる制度を導入することもできません。

さらに、就業規則がないと紛争が発生したときに長期化しやすいばかりか、裁判所に対して労務管理がずさんな会社だという心証を与える可能性もあります。

従業員が10人未満の会社に就業規則を作成する法律上の義務はないとはいえ、会社の規模を問わず、就業規則を作成することをお勧めいたします

就業規則を運用するまでの流れ

就業規則を作成し、運用していくまでの流れは、大きく分けて次のようになります。

  1. 就業規則を作成する
  2. 労働基準監督署へ届出をする
  3. 従業員へ内容を周知する

就業規則の作成

就業規則に記載する事項には、大きく分けて「絶対的必要記載事項」、「相対的必要記載事項」、「任意的記載事項」の3つがあります。

絶対的必要記載事項

絶対的必要記載事項とは、就業規則に必ず記載しなければならない事項です。

絶対的必要記載事項としては、以下のものがあります。

  1. 始業時刻
  2. 終業時刻
  3. 休憩時間
  4. 休日
  5. 休暇
  6. 労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
  7. 賃金の決定、計算の方法
  8. 賃金の支払の方法
  9. 賃金の締切り及び支払の時期
  10. 昇給に関する事項
  11. 退職に関する事項、解雇事由

相対的必要記載事項

相対的必要記載事項とは、事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項です。

相対的必要記載事項としては、以下のものがあります。

  1. 退職金制度を設ける場合は退職金に関する事項
  2. 賞与や最低賃金額の定めをする場合は、これに関する事項
  3. 従業員に食費、作業用品その他の負担をさせる場合は、これに関する事項
  4. 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  5. 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  6. 災害補償や業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  7. 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
  8. その他、事業場の全従業員に適用される定めをする場合においては、これに関する事項

任意的記載事項

任意的記載事項とは、絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項以外のもので、会社が任意に就業規則に記載する事項です。

任意的記載事項の例としては、服務規律に関する規定、休職に関する規定、採用に関する規定、異動に関する規定などがあります。

パートタイマーの就業規則

正社員とパートタイマーの就業規則を分けなければいけないという義務はありません。

しかし、長期雇用を想定した正社員と、雇用期間の定めがあるパートタイマーでは異なる扱いをしなければいけない場合が多いため、それぞれ就業規則を作成した方が望ましいです。

また、正社員用の就業規則のみ作成し、パートタイマー用を作成していないと、すでに説明した就業規則の「最低基準効」によってパートタイマ―に正社員の労働条件が適用されてしまう可能性がありますので、十分に注意が必要です。

就業規則の雛形をそのまま使うのは危険

雛形の流用は危険

就業規則の雛形は、労働基準監督署で入手することができるほか、インターネット上でも雛形を無料でダウンロードすることともできますが、就業規則を作成するときに雛形をそのまま流用することは危険です。

労働基準監督署で入手できる雛形は、労働者側に有利な内容となっており、トラブルになったときに会社側に不利益が生じる可能性があります。

インターネットでダウンロードできる就業規則は、企業の実態にそぐわない点も多く、最新の法改正に対応していない場合もあります。

このような就業規則をそのままにしておくと、労働問題が生じたときに会社側の主張が認められないことがあります。

労働基準監督署への届出

就業規則が完成したら、作成した就業規則一式に就業規則届と労働者の意見書を添付して労働基準監督署に届出を行う必要があります。

労働者の意見聴取

就業規則を労働基準監督署に届出をするときには、労働者の過半数で組織される労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者からの意見書を添付しなければいけません。

就業規則の内容について労働者の同意を得る必要があるわけではなく、仮に「この就業規則に反対である」という内容の意見書であっても、手続違反とはなりません。

また、意見聴取を行っていなかったとしても、それによって直ちに就業規則が無効となるわけではありません。

就業規則の周知義務

就業規則は、作成し、労働基準監督署に届出をするだけではなく、労働者に周知しなければいけません。

これを就業規則の周知義務といいます。

周知とは、「労働者がその内容を知ろうと思えば、いつでも知り得る状態に置くこと」をいいます。

周知の具体的な方法

就業規則を周知する方法としては次の3つがあります。

  1. 常時作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける
  2. 書面で交付する
  3. 磁気ディスク等に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する

周知されていない就業規則の効力は?

労働者に周知していない就業規則は無効となりますので注意が必要です。

就業規則が実質的に周知されているかが争われた「河口湖チーズケーキガーデン事件」では、次のような事情から周知がなされていたとはいえないと判断され、懲戒解雇が無効とされました。

  • 雇用契約締結の際、社長が従業員に就業規則が備え付けられている場所を伝えたとは認定できない
  • 会社が主張するように「就業規則」「河口湖チーズケーキガーデン」が記載されたシールがファイルに調布されていたとは認定できない
  • 労働条件通知書の「具体的に適用される就業規則名」の欄が空欄になっている
  • 会社の主張する規則が、就業規則と認識していない従業員もいた

就業規則の問題は弁護士にご相談ください

就業規則の整備は、今後の企業が健全な成長していくために不可欠なものです。

まだ就業規則の運用を行っていない企業はすぐに始めるべきであることは当然ですが、すでに就業規則を定めている企業も、現在の就業規則が会社の実情や法令と整合しているのかチェックする必要があります。

就業規則に関するご相談は、労働問題の専門家である弁護士にご相談ください

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