知的財産権のポイント
財産は、不動産や動産といった形のあるものだけに限られません。
人間の知的な活動から生じるアイデアにも財産的な価値が見だされることがあり、そのような財産を「知的財産」と呼びます。
そして、人間の精神活動の結果として生み出される創作物に対する権利を「知的財産権」といいます。
日本で知的財産について定めた法律として、知的財産基本法、特許法、実用新案法、著作権法、意匠法、商標法、種苗法などがあります。
企業経営と知的財産権
たとえば、あなたが画期的な発明を思い付き、今までになかったような商品を開発したとしましょう。
ところが、そのアイデアを拝借したほかの誰かが同じような製品を製造して利益を上げていたら、苦労して新しいアイデアを生み出すことが馬鹿らしくなってしまうでしょう。
そのようなことがないように、アイデアの産物に対する権利をきちんと保護することが知的財産権の役割です。
「そうはいっても、知的財産権なんて大企業でしか問題にならないのでは」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。
直木賞作家、池井戸潤さん原作のドラマ「下町ロケット」では、主人公が経営する町工場「佃製作所」で開発したエンジンが特許権を侵害しているとして大手企業から多額の損害賠償請求をされ、恵俊彰さんが演じる弁護士「神谷修一」に相談するシーンが話題になりました。
知的財産権の問題は大企業だけではなく、中小企業でも対策を求められる重要な経営課題なのです。
知的財産権の種類
知的財産にはさまざまな種類があり、なかでも「特許権」、「実用新案権」、「意匠権」、「「商標権」は代表なものとして「知財四権」と呼ばれています。
美術、音楽といった著作物に対する権利を保護する「著作権」も企業経営において頻繁に問題となります。
①特許権
特許権とは、高度な発明に対する権利です。
たとえば、菓子メーカーのロッテは餅の中にアイスクリームを入れるというアイデアを実現させるため、餅の成分を改良するなどした結果、「雪見だいふく」を開発しました。
「雪見だいふく」の特許は平成元年12月に特許庁により認められ、ロッテの独占商品となりました。
特許権の保護期間は20年ですが、医薬品などについては最長25年まで延長できる場合があります。
②実用新案権
実用新案権とは、物品の形状、構造または組み合わせにかかわる考案で、発明ほど高度ではないものに対する権利です。
特許権との大きな違いは、無審査で登録される点です。
実用新案権の保護期間は、出願から10年です。
③意匠権
意匠権とは、物の形状や模様など、特徴的なデザインに対する権利です。
意匠権を登録しておくことで、第三者が似たようなデザインの商品を販売することを防ぐことができます。
物のデザインについては著作権でも保護することは可能ですが、意匠権は工業上利用できる、いわゆるプロダクトデザインが保護の対象となります。
一方の著作権は原則として絵画などの純粋美術がその対象です。
意匠権の保護期間は、かつては「登録から20年」とされていましたが、2019年5月の法改正で「出願日から25年」に変更されました。
④商標権
商標権とは、商品やサービスのマークに対する権利です。
私たちの身の回りにある企業や商品のマークやロゴは、ほとんどに商標が付けられています。
文字、図形、記号だけでなく、立体的形状、色彩、音なども商標権によって保護されます。
商標権の保護期間は登録から10年ですが、更新登録制度があります。
⑤著作権
著作権とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものに対する権利です。
コンピュータプログラムも著作権によって保護されます。
著作権の保護期間は、原則として創作時から著作者の死後50年です。
法人著作については公表後50年間保護されます。
最後に
知的財産権は、企業に大きな利益をもたらしえるものです。
一方で、もし他者の知的財産権を侵害してしまえば、莫大な損害賠償義務を負うおそれもあります。
インターネットの爆発的な普及とグローバル化によって知的財産の問題は急激に複雑し、今までになかった問題が数多く生じています。
自社のイノベーションや創作活動の価値を守り、不測の損害を回避するために、知的財産権に関する問題は専門家である弁護士にご相談することをお勧めいたします。