「不当解雇」と言われたら?会社を守る方法を使用者側専門の弁護士が解説
労働局や労働基準監督署には総合労働相談センターという労働トラブルに関する相談ができる窓口が設置されています。
そこに寄せられる相談件数は平成28年度で113万741件あります。
そのうち、「解雇」に関する相談は3万6760件で、労使間の個別的な労働紛争に関する相談の中で3番目に多い数字です。
解雇トラブルはいつでも起こりえる
解雇について労働者が行政機関等に相談する機会が多いということは、それだけ問題が顕在化されやすいということです。
つまり、労働者が「不当解雇だ!」と言って会社を訴えることはいつ起こってもおかしくないのです。
そこで、今回は「不当解雇」のリスクと、リスク回避のための対応策についてご説明いたします。
不当解雇とは
民法上では、労働者及び使用者双方が一定の要件を満たせば雇用契約を自由に解約できることになっています。
しかし、日本は長年終身雇用制が根付いており、労働者の雇用の維持を最優先に考えているため、解雇について労働契約法に例外が認められています。
- 労働契約法16条
-
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
噛み砕いていうと、世間一般の常識で判断した場合に、解雇するほどの理由がないにもかかわらず、解雇をした場合は、その解雇はなかったことになるということです。
つまり、不当解雇とは、世間一般の常識に照らして、解雇するほどの理由がないと判断される解雇のことを言います。
具体的には、病気で入院するために一定期間労務に従事できない従業員を解雇した場合や勤務態度不良の従業員を何ら指導することなく解雇した場合などです。
不当解雇で解雇が無効になった場合、どうなるの?
雇用契約関係は継続する
まずは、解雇によって雇用契約関係はなくなりますが、解雇が無効になることによって、雇用契約関係は継続していたことになります。
つまり、解雇された従業員は復職することになります。
会社としては、その従業員に再度給料を支払わなければなりません。
それだけではありません。
バックペイ
解雇が無効の場合、解雇はそもそもなかったことになります。
つまり、解雇された日から解雇が無効だと判断される日まで、解雇された従業員は解雇されていなかったということになり、会社としては遡って給与を支払わなければなりません(バックペイ)。
つまり、まとめると次の図のようになります。
解雇無効と裁判所が判断した場合、会社は、従業員が実際に働いていないにもかかわらず、バックペイの支払いを命じられることになります。
この点は、会社にとって大きなリスクになります。
特に、裁判が長期化し、その結果解雇が無効と判断されるとその支払い金額は膨大なものになります。
慰謝料
バックペイの他に慰謝料の支払いが命じられる場合もあります。
ただし、多くの場合は、バックペイの支払いによって、労働者の精神的苦痛は慰謝されたとして、慰謝料を認めるケースはまれです。
残業代
また、忘れがちですが、労働者が不当解雇の裁判を起こす場合、往々にして、「残業代」の請求も行います。
残業代請求は自分が会社に所属している間はほとんど請求されません。
しかし、解雇された途端請求されます。
この点、経営者の方々は、雇用慣行賠償責任保険(EPL保険)に入っているから大丈夫と考えがちですが、不当解雇に基づく責任については保険でカバーできますが、残業代請求についてはカバーできない場合が多いため要注意です。
「不当解雇」で訴えられたら
不当解雇のリスク
不当解雇で会社が負うもっとも大きなリスクはバックペイです。
解決までの時間が長くなればなるほど、バックペイは膨らんでいきます。
そこで、万が一、解雇した従業員から「不当解雇だ!」と訴えられたら、すぐに弁護士に相談してください。
そうすることによって、裁判に備えた証拠の収集等もスムーズにいき、裁判を有利に進めることもできます。
不当解雇を未然に防ぐ
また、本来であれば、不当解雇の問題は顕在化しないことが一番です。
そのためには、「解雇する前に一旦立ち止まる」ことも重要です。
使用者側専門の弁護士に相談
たくみ法律事務所は、労働者側からのご相談やご依頼は基本的にお断りする使用者側専門の法律事務所です。
企業からのご相談は無料で承っております。
解雇の問題でお困りのときは、どうぞ安心してご相談ください。