横領など従業員の不祥事が発覚したときの会社の対応
従業員の不祥事には、セクハラ・パワハラ、横領、窃盗などさまざまなケースが考えられます。
まず理解しておきたいのは不祥事対応の大まかな流れです。
不祥事が発生した、あるいは発生した疑いがあるときには、
- 事実確認
- 従業員の処分(懲戒処分等)の検討
- 従業員に対する民事・刑事対応
- 再発防止策の策定・実行
という流れで対応します。
事実確認の方法
不祥事対応で最も重要とされるのが、最初の事実確認です。
会社は警察ではありませんので、不祥事が起きたときの調査権限は限定されています。
特に、従業員の私生活における行為についての調査権限は制限されます。
とはいえ、会社は積極的に不祥事について真相解明を行うべきであるというのが基本的な考え方です。
警察が介入する場合は警察による判断を待つべきであるという意見もありますが、警察の判断がいつになるかは不明であること、警察が調査事項を全て開示してくれるわけではないことを考慮すると、警察の捜査には協力しつつ、会社としてもできる限りの調査を行うべきです。
調査において注意すべきこと
調査においては、
- 調査対象者・調査事項を事前にしっかりと検討すること
- プライバシーに配慮すること
- 関係者以外の者が聴取をすること
等が重要になります。
①調査対象者・調査事項を事前にしっかりと検討すること
すぐに当事者を呼び出して聴取をしてしまいがちですが、事前にどのような客観的資料があるかを確認したうえで、誰に、どのような順番で、どのような内容を聞くかは最低限検討しておく必要があります。
②プライバシーに配慮すること
不正行為を行った者に対してもプライバシーへの配慮が必要なのは言うまでもありません。
特に、調査の結果が当初の想定と異なる場合には注意が必要です。
具体的には、当事者と面談する際には周囲に声が漏れないような場所を選ぶ、調査対象者等に口外禁止するよう命じておくなどの対応が考えられます。
③関係者以外の者が聴取をすること
不祥事の調査は関係者以外に行わせるようにしましょう。
できれば第三者委員会や他部署(危機管理部等)による調査が望ましいです。
もっとも、多くの中小企業では第三者委員会の設置や危機管理部等の設置は現実的ではありません。
そこで、調査機関として弁護士を選任する方法も考えられます。
もし事実関係の調査によって誤った事実関係を認識してしまうと、それを前提とした処分も誤る可能性が高くなります。
どのような調査をして、どのような結論に至ったのか、後に説明できる形にしておくことが重要です。
モニタリングに関する規定の準備を
調査においては、当事者に対するヒアリングだけではなく、メールやインターネット上における客観的証拠が重要になる場面が多々あります。
そのようなときに調査を容易にするため、PCの利用規定などにモニタリングに関する条項(不祥事対応時にはモニタリングをする場合があること)を定めておくとよいでしょう。