心理的負荷による精神障害の認定基準にパワーハラスメントに係る出来事が明示されました

心理的負荷による精神障害の認定基準にパワーハラスメントに係る出来事が明示されました

令和2年6月からパワーハラスメント防止対策が法制化され、中小企業には来年4月からパワハラ対策が義務付けられることとなりました。

この法律では、パワハラが次のとおり法律上初めて明確に定義されました。

  1. 優越的な関係を背景とした
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
  3. 就業環境を害すること

それを踏まえて、うつ病などの精神障害が労働基準法の業務上災害として労災認定できるか判断するための「認定基準」が改正され、パワハラに係る出来事が明示されました

今回は心理的負荷による精神障害の認定基準の改正について説明します。

「認定基準」とは

業務が原因となって起こった事故を労災保険法で「業務災害」といいます。

業務災害には業務上の負傷だけでなく、長時間労働による脳血管疾患や心臓疾患や、業務による心理的負荷が原因の精神障害(うつ病等)も含まれます。

これを「業務上疾病」といいます。

怪我の場合は業務との因果関係の判断が比較的容易ですが、疾病の場合は業務外の要因により発症することも多いため因果関係の判断が困難なことがあります。

そこで、うつ病など一定の業務上疾病については厚生労働省により判断基準が示されています。

これが「認定基準」です。

心理的負荷による精神障害に関する具体的な認定基準(平成23年12月26日付け基発1226第1号)」では、「対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」が要件の1つとされ、「心理的負荷」は、「強」「中」「弱」の3段階で評価するものとされています。

発病前おおむね6か月に「強」に該当する出来事があった場合や、「中」の出来事が複数あった場合には、強い心理的負荷があったものとされ、業務災害として認定されやすくなります。

今回の認定基準の改正でパワハラに関する項目が追加され、どのような出来事が起こったらどれだけの心理的負荷と評価されるかが明らかにされました。

たとえば、上司から部下に対し、人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない精神的攻撃が執拗に行われた場合、部下の心理的負荷は「強」と評価され、業務とうつ病との因果関係が認められる可能性が高くなります。

具体的出来事等へのパワーハラスメントの追加

今回、心理的負荷の評価の類型に「パワーハラスメント」が追加され、その具体的な出来事として「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が追加されました。

さらに、心理的負荷の強度を「弱」、「中」、「強」と判断する具体例についても、過去の支給決定事例を踏まえて修正されました。

「強」である具体例

上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合

上司等から、暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合

上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合

・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃

・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃

〇心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃、精神的攻撃等を受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合

「中」になる具体例

上司等による次のような身体的攻撃・精神的攻撃が行われ、行為が反復・継続していない場合

・治療を要さない程度の暴行による身体的攻撃

・人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を逸脱した精神的攻撃

・必要以上に長時間にわたる叱責、他の労働者の面前における威圧的な叱責など、態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃

「弱」になる具体例

〇上司等による「中」に至らない程度の身体的攻撃、精神的攻撃等が行われた場合

「上司等」の意義

なお、ここでいう「上司等」は職務上の地位が上位の者だけを指すのではありません。

同僚又は部下であっても、業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その者の協力が得られなければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な場合、同僚又は部下からの集団による行為でこれに抵抗又は拒絶することが困難である場合を含みます。

具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の修正

前述の改正に伴い、改正前の認定基準における「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」についてはパワーハラスメントに該当しない優越性のない同僚間の暴行や嫌がらせ、いじめ等を評価する項目として位置づけられ、心理的負荷の判断の具体例が修正されました。

「強」である具体例

〇同僚等から、治療を要する程度の暴行等を受けた場合

〇同僚等から、暴行等を執拗に受けた場合

〇同僚等から、人格や人間性を否定するような言動を執拗に受けた場合

〇心理的負荷としては「中」程度の暴行又はいじめ・嫌がらせを受けた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合

「中」になる具体例

〇同僚等から、治療を要さない程度の暴行を受け、行為が反復・継続していない場合

〇同僚等から、人格や人間性を否定するような言動を受け、行為が反復・継続していない場合

「弱」になる具体例

〇同僚等から、「中」に至らない程度の言動を受けた場合

「6か月」の要件について

前述のとおり、心理的負荷による精神障害が認められるためには「発病前おおむね6か月の間に」業務による強い心理的負荷が認められることが要件とされています。

しかし、反復・継続しつつ長期間にわたって行われることが多いハラスメントについては、発病の6か月の行為だけを評価の対象とすることは適切ではありません。

そこで、6か月よりも前にそれが開始されている場合でも、発病前6か月以内の期間にも継続しているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とするものとされています(すでにいじめやセクシュアルハラスメントについて同様の取り扱いがなされています。)

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