―顧問弁護士・人事担当者による調査と、公平性を確保する体制づくり―
はじめに

近年、社内調査のあり方が社会的な関心を集めています。
フジテレビを巡る一連の問題では、調査体制の独立性や客観性が大きな議論となりました。
また、福岡県議会ではハラスメント事案への対応を契機として、専門家の関与やハラスメント根絶条例の制定など、組織の対応が注目されています。
もちろん、これらは大企業や公的機関の事案であり、中小企業とそのまま同列に論じることはできません。
しかし、「調査は適切に行われること」だけでなく、「その過程が信頼されること」も重要です。 この考え方は企業規模を問いません。
ハラスメントや内部通報、横領、情報漏えいなど、中小企業でも社内調査が必要となる場面は少なくありません。
顧問弁護士・人事担当者による調査の強み
多くの企業では、顧問弁護士や人事担当者が調査を担います。
会社の事業内容や組織、就業規則を理解し、社内の実情も把握しているため、証拠保全や事情聴取、懲戒処分の検討まで迅速に進められることが大きな強みです。
問題となるのは「利害関係」

一方で、経営者や管理職が調査対象となる事案や、組織的な不正が疑われる事案では事情が異なります。
どれほど誠実に調査を行っても、「会社側に近い立場ではないか」と受け止められれば、調査結果への納得を得られないことがあります。
問題は、担当者の能力ではなく、「会社との利害関係」です。
弁護士が社内調査に関与する意義
社内調査は、事実関係を明らかにするだけではありません。
調査結果を踏まえて懲戒処分などを行った場合、後日、労働審判や訴訟で争われることもあります。
そのため、社内調査では、「何が起きたか」を調べるだけでなく、「裁判になっても耐え得る調査」を行うことが重要です。
弁護士は、将来の法的リスクを見据えながら、証拠の収集や事実認定、調査記録の整理まで行うことができます。特に、動かしようのない客観的証拠を重視し、関係者の供述についてはその裏付けの有無を慎重に見極めることが、事実認定の要となります。
独立した立場の弁護士が求められる場面
このような案件では、会社と利害関係のない弁護士への依頼が適切な場合があります。
当事務所でも、顧問契約のない医療機関からハラスメント事案の社内調査をご依頼いただいたことがあります。
その医療機関では、「正しい調査」であるだけでなく、「信頼される調査」であることを重視し、独立した立場の弁護士による調査を選択されました。
もちろん、これは顧問弁護士を否定するものではありません。日常的な法務対応と、独立した立場で社内調査を行う役割は異なり、事案に応じた使い分けが重要です。
おわりに

フジテレビや福岡県議会の事案は、「適切な結論」だけでなく、「信頼される調査の過程」が重要であることを示しました。
中小企業でも、その考え方は変わりません。
将来の法的リスクまで見据え、事案に応じて適切な調査体制を選択することが、企業を守る最善のリスクマネジメントといえるでしょう。
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