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先月、新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇・雇止めが、見込みを含めて4万人を超えたというニュースがありました。

新型コロナウイルスの蔓延は中小企業の雇用にも大きく長い影を落としています。

幣所では、コロナ禍が事業に多大な影響を及ぼした結果、従業員を解雇せざるを得ない状況に追い込まれたという相談だけでなく、

  • 「発熱により欠勤し、PCR検査でも陰性だったが、そのまま出社せず連絡が取れなくなった。」
  • 「テレワークに移行していた従業員から突然退職したいとの申し出があった」

など、会社からの解雇・雇い止め以外の退職に関する相談も増えています。

解雇と退職

解雇

会社が従業員に対して行う「解雇」は条件が厳しく、無効になるリスクが高いということは、弊所のニュースレター、セミナー等でたびたびご説明してきました。

v解雇の有効性を争われ、結果的に無効となった場合、(働いていなくても)解雇日以降の給与や不当解雇に基づく慰謝料の支払い義務が発生する可能性があります。

解雇はあくまで最終手段と考え、不用意に行うことは絶対に避けるべきです。

退職

一方、従業員から「退職」の申し出は自由に行うことができます

法的には、2週間前に会社に申し出ればいつでも退職できます(民法第627条1項)。

就業規則等で「退職時には1か月前に申し出なければならない」あるいは「退職するためには会社の許可を要する」などと定めている会社もありますが、従業員は2週間前の申し出により無条件で退職することができるのが原則です。

解雇か、退職か

「退職」なのか「解雇」なのかで紛争に発展する事例も多いです。

つまり「自分から辞めた」のか「会社から辞めさせられた」のかの違いです。

従業員が自主的に退職したにもかかわらず、後になって従業員から「会社に解雇された」と主張され、それが認められてしまうと、会社のリスクは格段に大きくなります。

会社としては、従業員から退職の意思を表示されたときには退職届を取り付けることを徹底してください。

退職前の有給消化と引き継ぎ

退職の申し出から2週間、年次有給休暇を使って休暇取得するケースも多いでしょう。

会社としては引き継ぎのために極力出社してほしいという思いもあると思います。

本来会社は従業員の有給休暇の申請に対して時季変更権を有していますが、退職後に年次有給休暇を付与することは当然できないことから、この場合の時季変更権の行使は困難です。

就業規則などで「退職前に引き継ぎを行う義務」が定めてあったとしても、その義務は就労義務の範囲内で課されるものであることから、それを理由として会社が年次有給の取得を拒否することは難しいです。

「年次有給休暇を買い上げることはできないか」という相談もありますが、会社が一方的に有給休暇を買い上げることはできず、従業員の同意が必要になります。

会社ができる現実的な対応として、可能な限り引き継ぎに協力してもらうよう説得を試みたり、そのための特別手当を支給することが挙げられます。

また事前の対応としては、やはり年次有給休暇を極力消化させておくことも重要になります。

音信不通時の対応は?

普通解雇

連絡がつかなくなってしまった従業員への対応はどうすればよいでしょうか。

まず考えられるのは、無断欠勤による普通解雇です。

就業規則等に「◯日以上無断欠勤した場合は解雇とする」といった規定が定められていることも多いと思います。

2~3日の無断欠勤で解雇とはいきませんが、無断欠勤が長期間続き、会社からの連絡に対しても何ら理由を説明しない状況が続くような場合には、解雇通知を発送することも手段として考えられます。

ただし、1年間で無断欠勤27日、遅刻・早退を99回した従業員の事案での解雇処分が無効と判断された裁判例もあります(神田運送事件:東京地方裁判所昭和50年9月11日)。

過去の処分状況や勤怠管理状況などを考慮した慎重な判断が求められます。

コロナ禍特有の問題

コロナ禍ゆえに起こりえるトラブルとして、発熱などをきっかけに欠勤した従業員がそのまま出社しなかったため解雇の手続をとったところ、「会社から自宅待機という指示を受けていたから出社しなかったから解雇は無効だ。休業手当を支払え」という主張をされる、というケースがあります。

そのような事態を回避するためには、発熱で欠勤し当初は自宅待機等の指示を出したとしても、体調など状況の聞き取りを継続的に行い、病欠の扱いなのか休業指示なのかを明確にしておく必要があるでしょう。

自然退職

電話してもつながらなかったり、文書を送付しても反応がないなど、完全に音信不通になってしまうケースもあります。

そのようなケースでは、自然退職の規定を適用する方法があります。

会社に一切連絡がなく、会社が調査をしても所在が不明な場合(雇用契約書上の住所を訪問しても不在、もしくは退去している等)には、1月程度の期間を設定して、自然(当然)退職の扱いにするというものです。

これは、連絡がつかなくなってしまった場合の最終手段であり、乱用することはできません。

もっとも、最近は自ら退職の意思表示をすることに抵抗がある従業員が多く、「退職代行」というビジネスもあるほどですので、従業員が退職の連絡をせずに行方不明となることは想定しておくべきです。

いざというときに備え、就業規則に自然退職に関する規定があるか確認されることをおすすめします

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