会社が倒産したときの取締役の責任①

はじめに

悩み

弁護士が経営難に苦しむ会社の経営者からよくご質問をいただくのが、会社が倒産したときに取締役はどのような法的を負うのかという疑問です。

原則として、単に経営に失敗して会社が倒産したというだけで取締役が株主や債権者から損害賠償請求されることはありません

なぜかというと、法人と個人は法律上別の法人格であり、会社の財産と取締役個人の財産は区別されているからです。

もし会社の債権者が会社を訴えて勝訴判決を得ても、その債権者は会社の財産だけしか差し押さえることができず、取締役個人に対しては何も請求できません。

しかし、代表取締役が会社の連帯保証人になっている場合や、取締役が本来の自分の職務を怠っていたなど重大な過失があった場合は別です。

このコラムでは、会社が倒産した際に取締役が責任を負うのはどのような場合なのか、弁護士が解説します。

取締役が会社に対する損害賠償責任を負う場合

取締役が会社に対して負う義務

すでに述べたように、単に経営に失敗して会社が倒産したというだけで取締役が株主や債権者から損害賠償請求されることはありません。

しかし、取締役が会社に対して負っている義務を怠った場合は会社に対する損害賠償責任を負う可能性があります。

まず、取締役が会社に対してどのような義務を負っているのか確認しましょう。

取締役と会社は、民法上の委任者と受任者の関係にあります。

受任者は委任者に対して「善管注意義務」、すなわち業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務を負うとされています。

また、会社法でも取締役は会社に対して「忠実義務」を負うと定められており、これは善管注意義務と同じ意味だと理解されています。

つまり、取締役は会社に対し、経営のプロとして通常期待される注意義務を果たさなければいけないということになります。

取締役が損害賠償責任を負う場合

では、取締役が会社に対して損害賠償責任を負う可能性があるのは具体的にどのような場合なのでしょうか。

会社法423条1項には次のように定められています。

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

取締役は、その任務を怠ったとき、すなわち「任務懈怠」があるときは会社に対する損害賠償責任を負います。

「任務懈怠」の具体例としては、①経営判断原則違反、②具体的な法理に違反する行為、③監視・監督義務違反、④内部統制システム構築義務違反などの類型があります。

任務懈怠の例

その1 経営判断原則違反

もし経営上の判断が結果として間違っていたときに取締役が損害賠償義務を負うとしたら、取締役は委縮してしまい、挑戦的な判断ができなくなってしまうでしょう。

そこで、取締役が情報収集・検討を適切に行い、その調査結果を踏まえた判断が著しく不合理なものでなければ、善管注意義務違反とは評価されないとされています。

これを「経営判断の原則」といいます。

経営判断原則からしても取締役の経営が任務懈怠と判断されるのは、たとえば取締役が十分な検討もなくリスクの高い投資運用を実施して失敗した場合や、取締役が会社業務と関連性のない交際費を支出した場合です。

その2 具体的な法理に違反する行為

取締役は、利益相反行為など法理に違反する行為によって会社に損害を与えた場合にも損害賠償責任を負うことがあります。

利益相反行為とは、取締役が会社の利益のために行動すると取締役個人にとって不利益になるケースや、逆に取締役個人のために有利な行為が会社にとって不利になるようなケースを指します。

取締役は会社の執行機関であると同時に一人の人間ですので、会社にとっては不利だとわかっていても、自分の利益を追求してしまう場合があります。

具体的には、取締役と会社が売買契約や贈与などを行う行為や、会社が取締役の第三者に対する債務を引き受けるような行為が利益相反行為に当たります。

取締役は、このような利益相反行為を行う場合には、取締役会を設置していない会社では株主総会、取締役会を設置している会社では取締役会の承認を受ける必要があります。

利益相反取引が行われ、それによって会社に損害が生じた場合は、その取引に関与した取締役は会社に対して損害賠償責任を負います

この場合、利益相反取引を行った取締役はもちろん、代表取締役や業務の執行をした取締役や、取締役会設置会社においては取締役会での承認決議に賛成した取締役も損害賠償請求の対象となりえますので注意が必要です。

次のページで、取締役が第三者に対して損害賠償責任を負う場合について解説します

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