弁護士吉原

高速大容量通信システム「5G」等の情報を不正に持ちだとして、不正競争防止法違反罪に問われたソフトバンクの元社員に対し、令和4年12月9日、東京地方裁判所は、懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円の有罪判決を言い渡しました。

中小企業においても、元社員が退職前に秘密情報を持ち出し、元勤務先である会社に大きな損失を与えるという事態は起こりえます。

今回は、このような営業秘密の侵害について解説します。

営業秘密とは

営業秘密とは何かについて、不正競争防止法2条6項に規定されています。

不正競争防止法2条6項

この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

すなわち、「営業秘密」に該当するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  1. 秘密として管理されている
  2. 有用な技術上又は営業上の情報
  3. 公然と知られていないもの

秘密として管理されていること(秘密管理性)

その情報に合法的かつ現実に接触することができる従業員等からみて、その情報が会社にとって秘密にしたい情報であることが分かる程度に、秘密管理措置がなされていることです。

秘密管理措置とは、オンライン・ストレージ上で特定の社員しか閲覧・ダウンロードができないようにアクセス制限をかけたり、書類にマル秘表示を付すことをいいます。

「有用な技術上又は営業上の情報」(有用性)

その情報自体が客観的に事業活動に利用されていたり、利用されることによって、経費の節約、経営効率の改善等に役立つものであることです。

たとえば設計図、製法、顧客名簿、販売マニュアル等は有用性が認められますが、脱税情報や有機物質の垂れ流し情報などの公序良俗に反する内容の情報は、法律上の保護の範囲から除外されます。

公然と知られていないこと(非公知性)

合理的な努力の範囲内で入手可能な刊行物には掲載されていないなど、保有者の管理下以外では一般的に入手できないことをいいます。

刊行物等に記載された内容や特許として公開された情報は除外されます。

営業秘密の持ち出しが増えています

個人情報保護

これら3つの要件を満たす「営業秘密」を退職前に社員が持ち出す行為や、退職後に元社員が会社のデータに不正にアクセスして持ち出すという行為が、近年増加傾向にあるようです。

冒頭でご紹介した事案で、ソフトバンクの元社員は、ソフトバンクから楽天モバイルに転職する直前に、自宅のパソコンで同社のサーバーにアクセスし、営業秘密にあたる5Gに関する技術情報に関するファイルを、自分のアドレスにメールで送信する等して不正に持ち出したとして、不正競争防止法違反の罪に問われていました。

一部報道によると、元社員は、裁判において無罪を主張していましたが、「ファイルにはソフトバンクが長年にわたって構築したネットワークに関するものや、5Gへの切り替えを計画していた基地局の情報など、将来的な構想をうかがい知れる重要な情報が含まれていた」と指摘し、営業秘密にあたると認めた上で、「携帯電話通信事業者にとって喫緊の課題となっていた5G化対応の計画など重要な情報が詰まった営業秘密を持ち出した悪質な犯行で、転職先での仕事に役立てようという動機も身勝手だ。」として、有罪判決を言い渡したようです。

営業秘密の持ち出しを防ぐには?

では、会社がすべき対策として、どのようなものが考えられるでしょうか。

まずは社員による営業秘密へのアクセスを制限したり、禁止したりすることが効果的であると考えられます。

一部の役員や社員にしか営業秘密にアクセスできないようにすることで容易に持ち出すことができなくなりますし、禁止することによって抑止効果が得られます。

次に、社員が退職する際に、営業秘密について持ち出さないこと等を誓約させることも有効でしょう。

顧客情報等が入ったPCや携帯電話を返却させる、営業秘密を持ち出さないこと、不正にアクセスして営業秘密を取得しないこと等を誓約させる等の措置が考えられます。

最後に

営業秘密を侵害した場合には、本件のように刑事事件としてのみではなく、民事事件としても問題になりますので、弁護士に相談する等して早期の対策を講じることをお勧めします

弊所でも本件のような事件を取り扱った実績がございますので、是非お早めにご相談ください。

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