ネットのクチコミ

「ナスコミ」は、看護士向けの転職サイトのことです。

現職看護士や元看護士が、現在または過去勤めた勤務先(病院やクリニック、介護施設などあらゆる医療機関)に関する口コミを投稿し、閲覧者が口コミを閲覧できます。

この「ナスコミ」の特徴として、投稿を閲覧するには、自らも投稿してポイントを貯める必要がある点です。

具体的には、1つの病院の口コミを見るために、100ポイントが必要です。

他方、1つの口コミをすることで、100ポイント獲得することができます。

このような閲覧の仕組みのため、閲覧者は、気になる転職先の口コミを確認したいがために、現在勤めている勤務先の口コミを投稿するインセンティブが働きます。

つまり、通常の転職サイト以上に口コミが投稿されやすく、口コミ数が多ければ生々しいコメントが投稿される可能性も高まります

ナスコミのクチコミを放置しているとどうなる?

病院・クリニック側が知らない内に、生々しいコメントがなされ、人手不足の原因になっているおそれがあります。

また、先ほどご説明したとおり、通常の転職サイトよりも投稿されやすい仕組みとなっています。

このため、「ナスコミ」は、通常の転職サイト以上に、医療機関への風評被害を与えるリスクが大きいといえます。

積極的に採用活動を進めているのにそもそもエントリーが少ない、離職率が下がらないという場合、ナスコミへのネガティブな投稿が大きく影響している可能性は十分あります。

さらには、医療機関においては、人員配置基準が定められていることは、経営されている方にとっては言うまでもありません。

この基準を大きく下回る状態だと、行政指導、さらには行政処分や罰則が科せられる事態にもなりかねません。

削除できるのはどのようなコメントか

後述するとおり、まずは、サイトの運営者に対して投稿の削除を求める手段が考えられます。

このときに判断基準となるのが、下記の「ナスコミ」の禁止事項(利用規約第8条第3項)です。

  • 第三者になりすまして情報を投稿または求人情報に応募する行為
  • 当社または第三者の著作権、その他知的財産権を侵害または侵害するおそれのある行為
  • 当社及び第三者を誹謗、中傷または名誉を傷つける行為
  • 公序良俗に反する内容の情報、文書及び図形等を他人に公開する行為
  • 第三者及びユーザー個人の氏名、住所、電話番号、メールアドレス等について、故意であるか否かを問わず虚偽または不備のある投稿情報または応募情報を登録する行為
  • 掲載施設での暴力行為等、掲載施設または当社、第三者に対する迷惑行為
  • 犯罪に結びつく、またはそのおそれがある行為
  • その他法令に違反する、または違反するおそれのある行為

また、サイト運営者が削除に応じない場合、裁判手続に移行した場合は、民法上の規定や刑法上の規定に違反する場合、具体的には、名誉毀損行為、侮辱表現、意見論評の域を超えた表現などの場合に、削除が認められます。

では、具体的に、どのような投稿が、削除の対象になるのでしょうか?

たとえば、「ここの内科は回転率が命で親身に対応するのではなくお金が目的か対応がデタラメ過ぎる。」「日常的に残業をさせられるのに残業代が一切出ないブラックリニック」といった投稿は、事実と反する内容であれば削除できる可能性があります。

仮に、サイト運営者が削除を不当にも認めなかったとしても、裁判上、名誉毀損行為として違法となる可能性が高いです。

ナスコミのクチコミの削除を弁護士に依頼すべき理由

ナスコミの口コミを削除したい場合、弁護士に依頼すべきです。

その理由は、①削除可能性が上がること、②窓口の一元化、③安心に削除を進めることができることにあります。

①については、サイト運営者への削除請求で、弁護士であれば法的観点から削除を依頼することができ、運営者に対して、説得的な削除請求が可能です。

これにより、早期かつ低コストで、問題の投稿を削除できることに繋がります。

万一、不当にもサイト運営者が削除しない場合は、裁判手続において削除の仮処分を求めることができますが、通常、相手方にも弁護士が着きます。

たしかに、本人訴訟もあり得るところですが、法的観点から適切に反論しなければ、削除できるものも削除できなくなってしまいます。

裁判手続においては、ご自分の権利を守るためにも、弁護士に依頼した上で手続きを進めるべきです。

投稿内容によっては、刑事責任を追及するレベルのものもありえます。また、そもそも、問題の投稿が刑事責任も問題になるレベルかの判断は難しいものもありますし、解決までにどのような手法があるか、どこに問い合わせたらいいか悩ましいこともあるのではないでしょうか。

弁護士であれば、解決までの道筋、手段、問い合わせ先など、総合的に案内することができます。

削除請求を請け負う業者も存在しますが、非弁行為と言って、弁護士法に違反する業者も紛れ込んでないとは言えません。

また、依頼した業者との間で金銭トラブルに発展し、ご相談に来られる方もいらっしゃいます。

しかし、トラブルになってからでは、もう渡したお金は帰ってこないということも少なくありません。

違法に加担する、あるいは金銭トラブルに発展する前に、安心してご依頼いただけるのは、弁護士事務所となります。

ナスコミのクチコミの削除の流れ

大きな流れとしては、まず、サイト運営者に対して削除を求め(裁判外での削除請求)、これが認められない場合、裁判所に削除を求めることとなります(裁判上の仮処分申立)。

弁護士に依頼することで、サイト運営者に対して、利用規約に則り、どのような規定に違反するかとの説得的な理由と共に問い合わせることが可能です。

しかし、サイト運営者が、不当にも、削除に応じないことも想定されます。

このような場合、裁判で、削除の仮処分を求めるという手続があります。この仮処分手続きでは、判断権者は裁判官ですので、法的に妥当な判断がなされることが通常です。

最後に

弁護士野中

「ナスコミ」は、閲覧システムからして、他の転職サイト以上に、閲覧しにくいという特徴もあります。

この特徴から、人間心理として、転職に関心が高い人以外に見られる心配も少なく、より過激で生々しいコメントがなされやすいと言えます。

口コミによる悪影響は、目に見えにくいとはいえ、皆さんが思っている以上に大きく、着実にむしばんでいきます。

刻一刻と損失は広がっていきます。

これ以上、損失が広がらないためにも、ぜひ弁護士にご相談ください

  • 野中嵩之弁護士
  • この記事を書いた弁護士

    野中 嵩之(のなか たかゆき)
    たくみ法律事務所 福岡オフィス所属
    福岡県古賀市出身。都大学法学部、京都大学法科大学院を経て、弁護士登録。労務問題の解決や誹謗中傷問題の解決に特に注力している。

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