コロナウィルスの影響で予約のキャンセルが相次ぎ、ホテルの売上が激減してしまいました。このままではホテルを閉鎖して従業員を解雇せざるを得なくなると考えていますが、何か問題はないでしょうか?

従業員の方の整理解雇をご検討されていることと思いますが、整理解雇の有効性は、いわゆる「整理解雇の4要件(4要素)」に基づいて判断されますので、この基準を満たすかどうかにご注意いただく必要があります。

また、4要件(4要素)の中でも、解雇回避努力義務を尽くしたかどうかが特に重要になります。

整理解雇とは

解雇

一般的に整理解雇とは、経営不振など会社側の経営上の理由によって行われる解雇のことを言います。

整理解雇も解雇の一種であるため、「客観的に合理的な理由を欠き、その権利を濫用したもの」と評価される場合には、無効になります(労働契約法16条)。

整理解雇は労働者の非違行為などを理由とした普通解雇とは異なるため、整理解雇が有効かどうかは普通解雇よりも厳格に判断すべきとされます。

整理解雇が無効になるとどうなるか?

整理解雇が無効になった場合、解雇が存在しなかったことになり、解雇期間中の給与を支払わなければならなくなります。

無効になった解雇期間中、労働者は働いていないため、本来であれば給料を支払う必要はないと思われます。

しかし、労働者が働かなかった(働けなかった)原因が会社側にあることから、解雇期間中の給与を払わなければならないとされてしまうのです。

整理解雇の4要件(4要素)とは

整理解雇の有効性については、具体的には、以下の4つの視点から判断されます。

  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力義務が尽くされているかどうか
  3. 解雇対象者選定が妥当かどうか
  4. 整理解雇の手続が妥当かどうか

かつては上記4つの視点は1つも欠くことが許されない4つの要件であると理解されていましたが、最近では、4つの視点に関係する諸事情を総合考慮して判断されるケースが増えています。

しかし、いくら総合考慮されるといっても、4つの視点のうちのどれかに問題がある事案では、整理解雇が無効であると判断される傾向にあります。

①人員削減の必要性

過去の裁判例を見ますと、人員削減の必要性があると言えるには、債務超過や赤字累積など高度の経営上の困難さがあるといった程度で足りるとされる傾向にあります(たとえば、大阪暁明館事件・大阪地決平成7年10月20日労判685号49頁)。

つまり、人員削減の必要性については基本的に経営者の判断が尊重される傾向にあるといえます。

ただし、人員削減の必要性と矛盾するような行動が行われた場合には、人員削減の必要性が否定され、整理解雇が無効になってしまいます。

たとえば、人員削減を行ってまもなく多数の新規採用を行ったり、高い割合の株式配当を行ったりした場合には、人員削減の必要性と矛盾するため、人員削減の必要性が否定されることになります。

②解雇回避努力義務

会社が解雇を回避するためにどのような手段をどのような手順で試みたかという観点から、解雇回避努力義務が尽くされたかどうかが特に問題になります。

会社としては、解雇に踏み切る前に、配転や出向、一時帰休、希望退職の募集など、解雇以外の手段によって解雇を回避するよう努力しなければなりません。

ほかにも、不要な資産の処分や人件費以外の経費の削減、役員報酬のカット、一時的な操業停止、残業規制、賃金カット、新規採用の停止などの措置をとるべきとされます。

以上の解雇回避手段を一切試みずにいきなり整理解雇を行った場合には、ほとんど例外なく解雇が無効とされているようです(たとえば、あさひ保育園事件・最一小判昭和58年10月27日労判427号63頁)。

特に希望退職の募集については、これを行わないまま整理解雇が行われた事案で解雇回避努力が不十分だったと評価されやすくなるため、行っておくべきと考えられます(山田紡績事件・名古屋高判平成18年1月17日労判909号5頁)。

また、以上のような解雇を回避するための措置だけでなく、再就職支援措置や退職金の上積みなどの不利益緩和措置も、解雇回避措置と合わせて行っておくべきです。

③解雇対象者選定の妥当性

解雇対象者の選定は、客観的で合理的な基準に基づき、この基準を公正に適用して行う必要があります。

客観的で合理的な基準として認められるものとしては、欠勤日数や遅刻回数、規律違反歴などの勤務成績、勤続年数などの企業貢献度などが考えられます。

また、30歳以下の者など転職が比較的容易な者を対象にするなど、労働者側の経済的打撃の低さを考慮したものも基準になりえます。

他方で、性別による区別や労働組合に所属していることなど、差別的な基準は合理的とは認められません。

業務成績によって判断することは、客観性で合理的な基準といえる?

一定の評価手続が毎年繰り返し行われているような場合であれば客観的で合理的な基準と評価されやすくなります。

しかし、直属の上司1人だけが評価を行っている場合など、特定の人物の独断に委ねられているような場合には、客観性・合理性に疑問を抱かせることになります。

年齢が高い労働者の賃金が高いので、1人を解雇する経済的効果は大きくなって、合理的といえそうだが問題ない?

年齢が高くて賃金が高いというだけの理由で優先的な解雇基準とすることは合理性が認められにくいとされます。

年齢を重視せざるを得ない場合には、早期割増退職金を支給したり、能力や成績を勘案したりするなどして柔軟に対処することが求められます(ヴァリグ日本支社事件・東京地判平成13年12月19日労判817号5頁)。

④手続の妥当性

従業員集会を開催したり、労働組合との協議の場を設けたりして、経営状況や人員削減の必要性、解雇回避措置の状況、人選基準、解雇予定人数、整理解雇の実施時期などについて、可能な限り詳細に説明を行い、労働者側に理解してもらえるよう試みる必要があります(大村野上事件・長崎地大村支判昭和50年12月24日労判242号14頁参照)。

ハローワークへの届出の提出

再就職援助計画

経済的事情によって事業規模の縮小等を行い、1か月以内に30人以上の労働者の離職を余儀なくされることが見込まれる場合、最初の離職が発生する1か月前までに、再就職援助計画を作成してハローワークに提出し、認定を受けなければなりません(労働施策総合推進法24条、同法施行規則7条の2、7条の3)。

この30人以上の労働者には、期間満了で離職する場合の有期社員は原則として入りませんが、雇用期間が3年以上の者と、契約が更新されることが明示されていた者については、例外的に含めなければなりません。

大量雇用変動の届出

1か月以内に30人以上の離職者が発生する場合、最終の離職者が発生する1か月前までに、大量雇用変動の届出を作成してハローワークに提出しなければなりません(労働施策総合推進法27条、同法施行規則8条)。

なお、この30人以上の離職者には、期間満了によって離職する契約期間が6か月未満の有期社員は含まれません。

多数離職届

事業主の都合等によって高年齢者(45歳以上65歳未満)が1か月以内に5人以上解雇等によって離職する場合、多数離職届を作成してハローワークに提出しなければなりません(高年法16条、同法施行規則6条の2)。

ハローワークに相談

どのような場合に上記各書面を出さなければならないか分かりにくいことも多いかと思いますので、整理解雇が予定され次第、早めにハローワークに相談しておくのがよいでしょう。

最後に

弁護士澤戸

冒頭でもご説明しましたが、整理解雇が有効と評価されるためのハードルは普通解雇に比べて高いとされます。

企業そのものの存続がかかっている重大な局面であり、迅速な判断・決定が望ましいのですが、整理解雇が無効と判断されて法的紛争に巻き込まれてしまうのは何としてでも避けたいところかと思います。

客観的な基準に基づいて人選を行ったつもりでも、第三者から見ると恣意的な判断と評価される場合もありますので、慎重に判断することを心掛けるようにしてください。

この記事は、公開時点での情報に基づいて執筆されています。

新型コロナウイルスに関する最新の情報は、厚生労働省ホームページ首相官邸ホームページ等をご覧ください。

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