弁護士小林

2019年に「改正育児・介護休業法施行規則及び改正指針」が公布・告示され、2021年1月1日から、育児や介護をする労働者が子どもの看護や親の介護などの休暇を時間単位で取得することができるようになりました。

子の看護休暇・介護休暇について、労働者が時間単位で休暇を取得することができるような制度の導入が義務付けられることとなります。

他方で、この制度を導入することにより、助成金の対象となる、労働環境に対する従業員の満足度が向上するなど会社側のメリットもあります。

今回は、この改正のポイントについてご紹介します。

子の看護休暇・介護休暇とは?

子の看護休暇

子の看護休暇とは、子どもが負傷または疾病にかかった場合、またはその予防を図るために必要な世話が生じた場合に休暇を取得できる制度です。

子の看護休暇を取得することができる労働者は、小学校に入学する前までの子どもがいる労働者です。

「予防を図るため」とは、具体的にはインフルエンザの予防接種や健康診断等を受ける場合を指します。

介護休暇

介護休暇とは、要介護状態にある家族が、介護やその身の回りの世話をする必要が生じた場合に休暇を取得できる制度です。

介護休暇を取得することができる労働者は、要介護状態にある家族がいる労働者です。

「家族」とは、事実婚を含めた配偶者・自身及び配偶者の父母・子・兄弟姉妹・祖父母・孫を指します。

育児休業や介護休業との違いについて

子の看護休暇・介護休暇と名称が似ている制度に育児休業・介護休業がありますが、これらは子の看護休暇や介護休暇とは別の制度ですので区別しておく必要があります。

大きな違いは、取得できる休暇期間の長さにあります。

子の看護休暇・介護休暇は、取得することができる時間の上限が1年度において5日(子どもや要介護状態にある家族が2人以上の場合は10日)が限度とされています。

一方で、育児休業については子どもが1歳になるまで連続したひとまとまりの期間休め、介護休業については要介護状態にある家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。

子の看護休暇・介護休暇が、突然子どもや要介護状態の家族が体調を崩したというような突発的な事態に対応するための制度である一方、育児・介護休業はまとまった期間に休むことで子どもの育児、家族の介護に対応できる制度であるといえます。

休暇制度の規定を置く場合の注意点

従業員が子の看護休暇・介護休暇をとった場合に有給とするか無給とするかは企業の裁量に任されています。

ただし、子の看護休暇・介護休暇は法律で定められた休暇にあたるため、「通常の欠勤」の場合と同様に取り扱いをすることはできません。

通常の欠勤の場合、欠勤した事実をその従業員の評価や査定において考慮することは問題ありません。

一方、子の看護休暇・介護休暇を取得したことを理由に従業員を不利益に扱うことは禁じられていますので、査定項目に含まれないようにするなど注意する必要があります。

改正のポイント

今回の改正のポイントは次の2点です。

より柔軟な時間単位での休暇の取得が可能に

まず、改正のポイント1点目として、休暇を取得できる単位が変わり、より柔軟に子の看護休暇・介護休暇を取得することができるようになりました

具体的には改正前は半日単位での取得が可能と定められていましたが、改正によって1時間単位での取得が可能となりました。

このような改正の目的は、育児・介護のための休暇をより気軽に取得しやすくすることで、暮らしと仕事との両立を支えるというところにあります。

また、休暇は労働者の申出に応じて労働者の希望する時間で取得させなければなりません。

つまり、「休暇は2時間単位で取得しなければならない」などと定めて、1時間単位での休暇取得の申出は認めない、といった制度にすることはできません。

ここで、今回の改正で企業に求められているのは、いわゆる「遅出」「早退」のような「始業時間から連続」または「就業時間に連続」する形での休暇取得制度の設定で、就業時間の途中で抜けて再び業務に戻ってくるような休暇の取得(いわゆる「中抜け」)の設定までは義務ではありません

ただし、厚生労働省としては、中抜けありの休暇取得制度の設計を推奨しています。

中抜けができれば、労働者にとって休暇制度の使い勝手はより良くなり、従業員満足度の向上が期待できるため、検討の価値はあるでしょう。

ただし、一度「中抜けあり」の制度を導入して後に「中抜け」なしとすることは労働者にとって不利益な労働条件の変更になり、所定の手続が必要となりますので注意が必要です。

すべての労働者が取得可能に

次に、改正のポイント2点目は、休暇取得できる労働者の範囲が広がったという点にあります。

すなわち、改正前は1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は休暇の取得ができませんでしたが、改正によって原則すべての労働者が取得できるようになりました。

もっとも、例外的に以下の労働者の場合には労使協定を締結することで休暇制度取得可能な労働者から除外することが可能です。

  1. 休暇を時間単位で取得することが困難な業務に従事する労働者(たとえば、流れ作業に従事している労働者の方や、長距離運転手などの長時間の移動を要する遠隔地で行う業務に従事している労働者を指します。)
  2. 入社6か月未満の者
  3. 1週間の所定労働日数が2日以下の者

会社のメリットやペナルティ

最後に、子の育児休暇・介護休暇を導入したときの会社のメリットや、導入しない場合のペナルティについてご説明します。

子の看護休暇・介護休暇導入による企業のメリット

まず、子の看護休暇・介護休暇導入を導入した企業は、職業生活と家庭生活の両立支援や女性の活躍推進に取り組む事業主として「両立支援等助成金」の対象となる場合があります。

助成金を受けるための具体的な要件・手続については厚生労働省のパンフレット『両立支援等助成金支給申請の手引き』をご覧ください。

子の看護休暇・介護休暇を導入しない場合のペナルティ

法律に違反して子の育児休暇・介護休暇を導入しなかった場合、従業員数に関わらず、厚生労働省から勧告を受け、勧告に従わない場合は企業名を公表されるという制裁を受ける可能性があります。

最後に

子の看護休暇・介護休暇を導入する事により、従業員の方が家庭の状況に合わせて働くことができるようになり、労働環境に対する満足度を向上させ、労働形態にかかわらず有能な人材を引き止めることが期待できます。

具体的な制度設計をご検討の場合は是非弊所にご相談ください。

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