ご質問
2020年3月に飲食店をオープンし、「雇用した日から1か月間を試用期間とする」という条件で従業員を雇用いたしました。
ところが新型コロナウイルスの感染拡大の影響で雇用の継続が困難になったため、試用期間の満了前に本採用拒否の通知を行いました。
その従業員から、「本採用を拒否されたのは不当解雇に当たる」「労基法20条に基づく解雇予告手当を支払え」等の要求をされています。
どのように対応すべきでしょうか。
試用期間中の本採用拒否について
従業員を新たに採用するときに広く利用されている試用期間は、法律性質としては「解約権留保付労働契約」であるとされています。
すなわち、「雇用契約自体は成立しているが、採用後に勤務態度などをみて採用の可否について最終的な決定をすることを予定し、会社側に解約権が留保されている」というものです。
雇用契約は成立していますので、試用期間中に本採用拒否を行った場合は「解雇」となり、労働法による解雇制限の対象となります。
試用期間中の労働者の本採用拒否に関する使用者の裁量の範囲は、正社員を解雇する場合と比べて広いとされています。
しかし、「新型コロナの影響で売上が落ちた」というだけの理由では解雇は違法とされる可能性が高いでしょう。
解雇予告について
労働基準法では、雇入れから14日以内であれば、解雇予告通知をしたり、解雇予告手当を支払ったりする必要はないとされています。
したがって本採用拒否の通知を行ったのが14日以内であれば、「解雇予告手当を支払え」という要求には応じる必要がありません。
もっとも、「14日」は解雇予告通知等の義務があるかどうかのラインに過ぎず、2週間以内であれば自由に解雇できるという意味ではありませんので注意が必要です。
対応
今回の相手方からの要求に対しては、
- 解雇を撤回する
- 解決金を支払って和解する
等の対応が考えられますが、本来であれば、解雇するのではなく休業手当を支払って休業させ、支給要件や助成率が大幅に緩和されている「雇用調整助成金」の利用を検討すべきだったといえます。