「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が国会で成立しました。

労働安全衛生法とは、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法律です。

今回の改正法では、化学物質管理のあり方の見直しや、重大な労働災害を繰り返す企業への対応等大きく6つの改正ポイントがありますが、今回はその中でも2点を説明します。

ストレスチェックの実施等の義務化

労働者の心理的な負担の程度を把握するための、医師、保健師等による検査(ストレスチェック)の実施を事業者に義務付けることとなりました。

これまでも、同法にて会社は従業員に対して、健康診断を受けさせる義務が定められていましたが、これに加えてストレスチェックを受けさせる義務を加えた形になります。

これは、精神障害の労災認定件数が3年連続で過去最高を更新するなど、近年労働災害としての精神障害が増加していることが背景にあります。

ストレスチェック後、労働者の希望に応じて医師による面接指導を実施し、その結果、医師の意見を聞いた上で、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切な就業上の措置を講じなければならないとされています。

もっとも、従業員50人未満の事業場については当分の間は努力義務とすることになっています。

受動喫煙防止措置

近年、様々な場所で分煙化、禁煙化が進んでいますが、会社においても、受動喫煙防止のため、事業者および事業者の実情に応じ適切な措置を講ずることを事業者の努力義務とすることとなりました。

これまでも指針等で喫煙対策が厚労省により示されてはいましたが、法律で規制することにより位置づけなおしたものです。

今回の法改正はもともと改正案の段階では、全ての事業者に職場の全面禁煙または空間分煙を義務化とするとされていましたが、これが、国の支援策(受動喫煙防止対策助成金制度や、無料相談窓口、たばこ煙濃度等の測定機器の無料貸出等)を通して取り組みを勧めることにして努力義務化として落ち着いた形です。

受動喫煙を理由として被害を訴える労働者側が会社に勝訴した判決は多くはありませんが、慰謝料として5万円を認めた江戸川区職員事件(東京地裁平成16年7月12日判決)や、受動喫煙が原因で労働者が化学物質過敏症になったとして、会社から和解金700万円を支払った事例(札幌地裁滝川支部平成21年3月4日付和解)など、会社側の安全・衛生配慮義務違反を認めた事例もありますので、努力義務であるから一切法的責任を追わないということができないのは当然です。

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