ご相談内容

当法人が運営する福祉施設において、職員間で「管理職によるパワーハラスメントがあった」との申し立てがありました。
法人内で担当者がヒアリングを行い、報告書を作成していたものの、パワーハラスメントに該当するかどうか、また今後どのような対応を取るべきかの判断が難しい状況です。
職場全体にも緊張が生じ、対応を誤るとさらなる混乱や法的トラブルに発展するおそれがあったため、法人として外部専門家の関与を希望され、当事務所へご相談をいただきました。
弁護士の対応

まず、法人からこれまでの社内調査資料やヒアリング記録をお預かりし、内容を精査しました。既存資料では、関係者の認識に食い違いが見られ、事実関係の整理が不十分であることが分かりました。
そのため、担当弁護士が現地を訪問し、当事者双方から直接ヒアリングを実施しました。
ヒアリングでは、行為が行われた具体的な場面や発言の内容、発生時期・頻度、背景事情などを丁寧に確認しました。
聴取の際には、当事者が感情的になることなく、安心して話せるような質問の仕方にも配慮しました。
さらに、実際に行われたメールのやりとりや社内報告書等の客観的資料に記載された事実と照合し、主観的な内容に偏らないよう、事実を客観化しました。
法的検討
パワーハラスメントの該当性判断にあたっては、
- 行為の目的・態様・頻度
- 業務上の必要性や指導との関連性
- 当事者間の関係性や職務上の地位
- 発言・行為が社会通念上相当な範囲を超えるものか
など、複数の観点を総合的に検討しました。
これらの要素を踏まえ、行為が業務上の注意指導の範囲にとどまるのか、それとも人格否定的な言動に当たるのかを慎重に分析しました。
その結果、今回のケースでは、明確にパワーハラスメントと評価することはできないと判断し、法人に対してその旨の調査報告書を作成して提出しました。
ご依頼いただいた結果
弁護士の調査・報告を受け、法人は客観的な事実関係に基づいた判断を行うことができたと思います。
内部のみの対応では不安視されていた「判断の公正性」や「処分の妥当性」が担保され、円満に事案を解決させることができました。
弁護士からのコメント

パワハラやセクハラ等、職場内でのハラスメント問題は、初期対応を誤ると大きなトラブルに発展することがあります。職場で労働者間のトラブル(セクハラやパワハラ等)が起きた場合、法人としてまず対応すべきことは、早期の事実確認です。
特に、内部担当者のみで調査を行う場合、当事者双方の主張が対立し、どちらの言い分が正しいか判断しづらいケースが少なくありません。
そのような場合、弁護士など外部の専門家が入ることで、第三者の立場から中立・客観的に事実を整理することができます。
また、早期に調査を行うことで、当事者の記憶が薄れることやメールの削除等の証拠の散逸を防止することができます。
そして、処分が不相当に重い場合には、後に処分の有効性について争われる可能性があります。法的な基準に照らしてハラスメント該当性や処分の相当性を判断することにより、組織としての対応方針を明確にし、後の紛争を未然に防ぐことが可能になります。
本件のように、処分や対応方針を決定する前の段階でご相談をいただくことで、不要・不相当な処分やレピュテーションリスク(企業の評判リスク)を防ぐことに繋がります。
法人内での判断が難しい場合は、早めに弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
- 早期に事実確認を行い、記録を残すこと
- 当事者双方および関係者から公平かつ中立的な立場で聴取すること
- 客観資料(メール・文書・勤怠データ等)を併せて検証すること
- 判断が難しい場合は、弁護士等外部の専門家を活用すること
- 調査対象:当事者2名+関係職員数名
- 実施期間:約4週間
- 実施内容:ヒアリング・資料精査・報告書作成
- 成果物:パワーハラスメント該当性に関する調査報告書(法人提出)









