ご依頼者様

業種

サービス業

所在地

九州地方

ご相談内容

相談

この事案は、24時間のシフト勤務で働いていた元従業員(相手方)から、多額の未払い賃金を請求されたというものです。

相手方の代理人は、「元従業員は24時間体制で職場に待機しており、労働からの解放が保障されていなかった」「会社は固定残業代を支給していたと主張するが、固定残業代の合意は無効である」などと主張して、未払い賃金として2000万円を請求してきました

ご依頼いただいた結果

これに対して当方は、「相手方が労働時間として主張する時間のうち大部分は待機時間に過ぎず、全ての時間を労働時間と評価するのは無理がある」「残業代は『固定残業代』という名目で支払われており、相手方は残業代として支払われていると認識していたはずであるから、固定残業代の合意は有効に成立していた」などの反論を行い、相手方に支払うべき金銭は約400万円が妥当であると主張しました。

その後数回にわたって相手方代理人と交渉を行った結果、最終的に約700万円での和解に至りました。

結果的に、当初の相手方の請求額から約1300万円の減額に成功しました。

弁護士のコメント

監視又は断続的労働

弁護士吉原

本件は、24時間のシフト勤務で働いていた従業員の賃金が問題となった事案です。

労働基準法では、労働者が過重な労働を強いられることを防ぐために、労働時間、休憩及び休日について制限が設けられています。

しかし、マンションの管理人やビルの警備員の中には、職場に住み込み、あるいは隔日勤務のシフト制で勤務している方も多くいらっしゃいます。

このような仕事は、業務の必要性がないときには睡眠や休憩をとることが認められている点で一般の仕事と異なります。

労基法は、このような業務を「監視又は断続的労働」と呼び、一定の条件の下で、割増賃金など一部の規定を適用しないこととしています(第41条)。

もっとも、このような働き方はあくまで労基法の例外であり、住み込みのような働き方に対して常に適用除外が認められるわけではありませんので注意が必要です。

たとえば、警報や電話が鳴ったときはすぐに対応しなければいけない場合、その時間は使用者の指揮命令下に置かれていたとして労働時間とされる可能性が高いです。

固定残業代制

契約

本件の争点の一つとなったのは固定残業代制です。

これも未払い残業代請求事件において問題となりやすい制度です。

固定残業代制が有効とされるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

たとえば、固定残業代制をとることが雇用契約書等において明示され、契約の内容となっている必要があります。

従業員に十分に説明することなく、会社が一方的に固定残業代制を適用して賃金を支払っているような場合、固定残業代制が無効とされ、多額の未払い賃金を支払わなければならなくなることがあります

固定残業代制を導入するときには、就業規則や雇用契約書等の内容を慎重に検討する必要があります。

労働時間の管理

労働安全衛生法では、医師による面接指導を実施するために、厚生労働省令で定める方法により労働者の労働時間の状況を把握することを使用者に求めています(第66条の8の3)。

この規定は、時間外労働の規定が適用除外となる「管理監督者」や「監視又は断続的労働に従事する者」にも例外なく適用されます。

未払い残業代請求事件においては、相手方や裁判所から、タイムカード等の労働時間に関する資料の提出を求められるのが一般的です。

従業員の労働時間の状況を把握しておらず、資料を提出できないと、労働者が主張する労働時間がそのまま認められてしまうことがあります。

賃金の未払いリスクを回避するためには、タイムカードや勤怠管理システム等を使って労働時間を適切に管理し、いざというときに提出できるように記録を保管しておくことが重要です。

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