はじめに
皆さんは、EAPという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
EAPとは、Employee Assistance Programの略称で、日本語に直せば従業員支援プログラムとなります。
EAPとは本来、従業員のメンタルヘルスケア支援から発展した福利厚生制度ですが、近年日本でも弁護士による法律相談サービスを組み込んだEAPが注目されています。
弁護士が関与するEAPは、企業が外部の法律事務所と契約し、従業員が職場外で抱える個人的な法律トラブルを無料または低額で相談できる窓口を提供する仕組みです(本格的な受任となる場合は別途費用がかかります)。
早期に専門家へつなぐことで、問題の長期化・業務支障を防ぎ、従業員が業務に専念できるようにすることが目的です。
本稿では経営者視点での導入メリット・EAPではできないこと・実例をご説明します。
EAPを顧問弁護士に依頼するメリット
1. 従業員の福利厚生となる

プライベートの悩みは仕事の質に直結します。
悩みをすぐに専門家へ相談できる態勢があることで、悩みが悪化することを防止し、業務へ集中できる状態へ戻るお手伝いができます。
結果として、欠勤・離職・現場混乱のリスク低減も期待できます。
2. 会社側の相談がない月でも顧問料が無駄にならない

顧問弁護士と契約して毎月の顧問料を支払っていても、会社相談がない月はあります(=会社に問題がないということなので、悪いことではありません)。
その間も従業員からのEAP相談で顧問弁護士を有効活用できます。
3. リスク予防・コンプライアンスの“土台作り”

プライベートの問題は、会社のトラブルにも繋がりかねません(金銭トラブルでの横領など)。
そのため、従業員のプライベートの問題を解決することが、会社のリスク予防にも繋がります。
また、従業員が顧問弁護士に相談しやすい環境を作ることで、自発的なコンプライアンス文化を育むこともできます。
EAPとしてできないこと
一方で、EAPの対応をする弁護士は、会社の顧問弁護士でもあるため、会社に対する請求や紛争に該当する相談(例:未払残業代の請求、パワハラでの会社への法的措置など)は、利益相反になるため受けることができません。
EAPの相談で、会社との利益相反となると判明した時点で、相談を中断し、別の弁護士への相談等を勧めることになります。
従業員からの相談の実例
弊所では、顧問先企業の従業員の方から、プライベートの相談を受け、解決した実例があります。
債務整理

借金を滞納してしまうと、債権者が訴訟等の手続きをとり、裁判所から通知が届きます。
その通知をさらに放置すると、給料の差押えがされることがあります。この場合は会社に連絡が行くため、会社がその時になって、従業員の借金の存在に気づくことがあります。
給与差押えを受けると、給与の4分の1が差押えられ、生活が苦しくなる上、会社にも居づらくなるため、会社を辞めて転職する方も多いです(転職すると給与差押えが解除されます)。
しかし、会社は従業員を失ってしまうことになります。
弊所が対応した事例でも、従業員の給与差押通知が来たことで会社が従業員の負債を知り、相談につながりました。
その件では、会社が破産申立の費用を援助することで、破産申立を進めることができ、従業員も転職せずにその会社で働き続けることができました。
交通事故

残念なことですが、交通事故は誰にでも起こり得ます。
会社の車で事故を起こした場合は会社の相談として顧問弁護士を利用できますが、EAPなら、従業員個人がプライベートで事故を起こした場合でも、弁護士に相談することができます。
交通事故においては初動が重要です。
交通事故の初期において、専門家に相談できる環境があることは、強い安心感に繋がります。
弊所で受けた事案では、相談後に保険会社への賠償請求を受任した事案や、受任に至らないまでも過失交渉のアドバイスなどを行った実例があります。
まとめ
EAPとして顧問弁護士を利用することで、従業員が顧問弁護士に相談できる体制を構築できます。
それによって、従業員の福利厚生につながり、ひいては従業員のパフォーマンスを高めることにもつながります。
企業の規模・業態・既存体制に合わせた運用設計をご提案しますので、まずは一度、ご相談ください。
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