はじめに

弁護士荻野

IT業界では、システム開発やデザイン業務など多様なプロジェクトを推進するため、フリーランスや下請事業者の活用が広がっています。

しかし、外部パートナーとの取引には法的リスクも伴います。

「フリーランス保護新法」と「下請法」の違いを理解することが重要です。

法律違反による行政処分や企業の社会的信用低下を招かないためにも、両法の違いや対応策を理解することが求められます。

フリーランス保護新法とは?

フリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスとの取引を適正化し、安定した就業環境を整備するための法律です。

対象は「従業員を使用しない個人事業主や一人法人」です。

たとえば、個人のWebエンジニアやデザイナー、ライターなどが該当します。

企業には以下の義務があります。

  • 取引条件の明示義務:書面や電子メール等で業務内容、報酬、納期などを通知
  • 報酬支払義務:60日以内、または元請契約から30日以内に支払う
  • 禁止行為の明確化:1か月以上の契約での買いたたきや一方的な変更は禁止
  • ハラスメント対策義務:6か月以上の契約では相談体制の整備が必要
  • 育児介護配慮義務:申し出があれば柔軟な働き方を配慮
  • 契約解除の予告義務:6か月以上の契約解除には30日前の予告が必要

これらは企業の規模に関係なく全企業に適用されます。

下請法とは?

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者による下請事業者への優越的地位の濫用を防止することを目的としています。

対象は主に資本金3億円超の企業とその下請先(個人事業主含む)です。

企業の規模によって適用対象が異なります。

主な義務は以下のとおりです。

  • 書面交付義務(3条書面):取引内容を記載した書面の交付(電子メールは同意が必要)
  • 報酬支払期日の明確化:60日以内に支払期日を設定し、遅延時は年14.6%の利息が発生
  • 禁止行為(11項目):買いたたき、不当減額、受領拒否、不当返品などを禁止
  • 記録保存義務(5条書類):取引書類を2年間保存する義務

違反時には高額な返金や企業名公表といった厳しいペナルティが科される場合があります。

フリーランス新法と下請法の主な違い

両法の違いを理解することはコンプライアンス上不可欠です。

以下に代表的な相違点を整理します。

  • 対象企業の違い:フリーランス新法は全企業対象、下請法は資本金等により対象が限定
  • 交付手段の違い:フリーランス新法は電子メール等で通知可能、下請法は原則書面
  • 禁止行為の適用条件:新法は契約期間1か月以上、下請法は期間に関係なく即時適用

IT企業が取るべきコンプライアンス対応

契約管理と法的区分の明確化が鍵となります。

以下の対応策を検討すべきです。

  • 契約書テンプレートや発注管理の整備により、フリーランスと下請を明確に識別
  • 報酬支払プロセスの見直しとシステム化による遅延防止
  • 社内研修の実施により、法務部門以外のスタッフにも法令知識を浸透させる
  • フリーランスに対するハラスメント防止や柔軟な働き方支援体制の構築

おわりに

両法の理解と実践は、企業の信頼性を支える重要な要素です。

当法律事務所では、貴社の状況に応じた具体的な支援をご提供します。

法的リスクを未然に防ぐためにも、ぜひお気軽にご相談ください。

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