新型コロナウイルスの影響により業績が悪化し、人件費節減のために従業員を解雇せざるを得ない企業も多くあると思います。

4月には、昨年10月に米ユナイテッド航空から解雇された元客室乗務員計83人が同社を相手取り、労働者としての地位確認や賃金相当額として一人あたり毎月50万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こした、という報道がありました。

原告は、拠点閉鎖の必要性は高くなく、希望退職者の募集なども実施されておらず、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う収益悪化を考慮しても、解雇を回避する努力が不十分だと主張しているようです。

整理解雇の要件

会社の業績悪化を理由に従業員を解雇することを「整理解雇」と言います。

従業員側に理由のある「普通解雇」や「懲戒解雇」とは異なり、会社側の一方的な都合に基づく解雇です。

コロナは企業にとっても不可抗力であることは間違いないのですが、だからといって、全ての「整理解雇」が有効だというわけではありません。

「整理解雇」は従業員への影響がとても大きく、従業員に非がない場合も多いので、裁判でも厳しい要件が要求されています。

4つの要件

「整理解雇」が有効であるためには、①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務、③人員選定の合理性、④手続の相当性が必要であるとされています。

人員削減の必要性については、比較的会社の裁量が広く認められると言われてはいますが、裁判では、どの程度売り上げが減っていたのか、業績悪化はどの程度の期間続きそうだったのか、今後回復する見込みがあったのか等について会社側が立証する必要があります。

解雇回避努力義務については、解雇は最後の手段と言われることからわかるように、解雇以外の手段はなかったのかが審査されます。たとえば、希望退職者を募ったのか、役員報酬の減額は実施したのか、新規採用を停止したか、等の事情が考慮されます。

人員選定の合理性については、整理解雇をせざるを得ないとしてもその選定に客観性はあるか、恣意的な意図が含まれていないか等の事情が考慮されます。

④最後に、手続の相当性については、事前に従業員に対する説明の機会を設けたか、適法に解雇予告を実施したか(30日前予告あるいは30日分の解雇予告手当の支払)等の事情が考慮されます。

整理解雇が無効とされると?

もし、裁判で「整理解雇」が無効であると判断されてしまった場合には、従業員に対して、解雇以降の賃金相当額の金銭を支払う義務が生じます(解雇以降、従業員が会社で働いていないにも関わらず、です)ので、企業にとっては大きな打撃となります。

実際に、福岡地方裁判所は2021年3月、コロナ禍で業績が悪化した観光バス会社から整理解雇された運転手が、労働者としての地位確認と賃金の支払いを求めた仮処分手続きにおいて、「人員削減の必要性は一応認められる」ものの、「人選の基準を説明せず、希望退職者も募らず」に解雇をしており、「解雇は無効」であると判断し、会社に賃金の支払いを命じています。

最後に

このように、整理解雇が認められるための要件は厳しく、業績が思わしくないからといって不用意に従業員を解雇するのは大きなリスクがあります。

そのようなリスクに備えるための手段の一つに、雇用慣行賠償責任保険があります。

雇用慣行賠償責任保険とは、会社が従業員からハラスメントや不当解雇を理由として損害賠償責任を追及された場合の賠償金を補償してくれる保険です。

人件費削減の必要性が生じたときには、解雇が可能か弁護士にご相談いただくことも重要です。

業績悪化を理由とする整理解雇が難しい場合であっても、従業員の勤務態度に問題があれば懲戒解雇できる可能性もありますし、所定の手続に従って就業規則を変更し、賃金規定を見直すことができる場合もあります。

まずは早めに弁護士にご相談ください。

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