業種
建設会社
所在地
九州地方
ご相談内容

退職した従業員から、会社に対し、上司から威圧的な指導を受けたことにより、うつ病を発症したとして、高額な慰謝料を請求する旨の書面が届きました。
また、当該従業員からは、パワーハラスメントによる労災であるとして、労基署に労災申請もされており、労基署から会社に事情確認の連絡も入っています。
当該従業員に対し、指導をした上司に事実確認をしたところ、パワーハラスメントにあたるような指導はしていないと聞いています。
そのため、会社としては、当該従業員がうつ病を発症したこと自体に疑問があります。
このような場合にも、従業員から請求されているとおりの慰謝料を払わなければならないのでしょうか。
また、労基署から入っている連絡には、どのように対応したらよいでしょうか。
弁護士のアドバイス
まず、会社に対し、上司が退職した従業員に対して行った指導の内容や方法を確認したところ、相手方(パワーハラスメントを訴える従業員)が主張するような事実はなかった、ということでした。
また、仮に、相手方の主張のとおりの事実があったとしても、相手方が主張する慰謝料の金額は、裁判例の傾向を踏まえると、相場と考えられる金額よりも非常に高額なものでした。
そのため、まずは退職した従業員に対し、パワーハラスメント行為の立証をするように求め、慰謝料の金額についても減額交渉するべきだとアドバイスしました。
労基署からは、相手方からの労災申請に対し、事業主の証明を求める書面や事実関係について調査する書面が届いていました。
会社が労災と認めないのであれば、その旨を的確に労基署に伝える必要があるため、弁護士に依頼し、労基署への意見書の作成等の対応を任せるべきだとアドバイスしました。
ご依頼いただいた結果
まず、相手方に対しては、弁護士が交渉窓口になり、相手方が主張する事実を裏付ける証拠の提出を求めました。
しかし、相手方から証拠の提出はありませんでした。
また、上司や他の従業員からの聞き取り、日報などの勤務状況に関する資料の精査を行ったところ、相手方が主張する事実と異なる証言や資料を確認しました。
このような証拠の状況から、相手方が、会社での勤務や上司との人間関係が原因で、うつ病を発症する可能性は非常に低いと考えました。
そのため、相手方に対しては、慰謝料を支払うことはできないことを主張しました。
また、労基署に対しても、会社が主張する事実関係を証拠とともにまとめ、相手方が、会社で勤務していたことと、うつ病を発症したこととの間に因果関係はないことを主張する意見書を提出しました。
その結果、労基署からは、労災には該当しないとの判断を受けることができました。
そして、相手方には、労基署での判断結果も踏まえ、改めて慰謝料請求の根拠がないことを主張し、最終的には会社に対する金銭的な賠償をしないという内容での和解が成立しました。
弁護士からのコメント

会社が、従業員から突然ハラスメントを理由に金銭的な請求をされるケースは少なくありません。
そのようなときにも、
- 従業員が主張する事実に裏付けはあるのか
- 事実であるとしてハラスメントに該当するのか
- ハラスメントに該当するとして慰謝料としてどの程度の金額が認められるべきなのか
という判断は重要です。
他方で、そのような判断には、法的な判断が不可欠です。
また、労基署からの調査についても、労基署任せにしてしまうと、従業員の言い分どおりに労災として認定されてしまいます。
労基署における労災認定が終了後は、従業員から会社に対し慰謝料等の金銭的な請求が行われることが一般的であり、一度労災として認定されてしまうと、金銭的な請求でも不利な立場となってしまいます。
そのため、従業員が主張する内容に少しでも疑問を抱く場合には、労基署に対する調査の段階から、弁護士に対応を依頼して、積極的に対応していく必要があります。
労災トラブルなどで対応にお困りの企業の皆様は、お気軽に弊所までお問い合わせください。