会社が倒産。取締役個人の財産も差し押さえられることがある??

問題事例

悩み

企業経営には失敗やリスクはつきものですが、その責任は会社のみが負い、取締役等が責任を負うことはないのでしょうか?

例えば、経営悪化により会社が倒産してしまった場合、取締役が取引先等から責任を追求され、財産を差押えられてしまうこともあるのでしょうか?

弁護士の視点

弁護士

結論として、会社が倒産(又はこれに近い状態)にある場合、取引先や株主等から取締役等の役員(以下「取締役等」といいます。)の責任追求がなされ、取締役等の個人資産が差押えられることもあります。

弁護士としては、常に、回収可能性を考えて請求を行いますが、基本的に、会社のみを訴えて勝訴判決を獲得しても、会社の財産のみしか差押えることはできません。

そのため、会社が倒産又はこれに近い状態にある等、回収可能性に不安が残る場合、その取締役等に対して責任を追求することは良くあります

また、会社の資力が問題ない場合であっても、会社とともに取締役等の個人責任が追求される場合もあります。

以下では、企業経営に伴い、取締役等個人の責任が追求され得るケースの一部をご紹介いたします(以下、「会社」とは「株式会社」を念頭に説明します。)。

法律根拠

対会社責任(会社法423条1項)

【条文】

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

取締役等が、その「任務を怠ったとき」(「任務懈怠」といいます。)、当該取締役等は、会社に対して、損害を賠償する責任を負います。

「任務懈怠」とは、①具体的な法令違反、又は②善管注意義務違反・忠実義務違反を意味していると言われます(具体的な類型については後述します。)。

例えば、取締役等が十分な検討もなくリスクの高い投資運用を実施して失敗した場合や、取締役が会社業務と関連性のない交際費を支出した場合、当該取締役は、会社からその損害の賠償を求められることがあります

対第三者責任(会社法429条1項)

【条文】

役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

こちらも取締役等の任務懈怠を原因とする損害賠償の義務を規定していますが、異なる点は、会社法423条1項が当該取締役等の所属する「会社」に対する責任であるのに対し、会社法429条1項は取引先や労働者等の「会社以外の第三者」に対する責任となります。

典型的には、取締役の放漫経営や利益相反取引により会社が倒産した場合、会社債権者が損害を被った場合等がこれに当たります。

具体的事例

以下では、取締役等の個人責任を認めた事例の概要を、取締役の任務懈怠の類型ごとに紹介します。

具体的法令違反型

①取締役会決議を欠く利益相反取引(東京地裁H18.11.9判決)

バルブの製造・販売を営む会社が約480万円で購入した自動車を、その約7ヵ月後に、取締役会決議を経ずに代表取締役が約290万円で購入した事案について、再調達価格との差額40万円を会社の損害であるとして、代表取締役に賠償を命じた(この他、代表取締役が、自らの身辺警護等のために会社から支出した調査費用1,200万円につき、個人的な支出であり会社にとって不必要として会社への支払いを命じた。)。

②競業避止義務違反(東京地裁H21.1.20判決)

設備工事を営む会社の代表取締役が、同種事業を営む別会社を設立し、設立協力者を代表取締役に据えて自らも従前の顧客を回り、工事を受注し利益を上げた事案において、代表取締役の競業避止義務違反を認定し、会社に対して、約560万円の賠償を命じた。

③労基法違反(大阪地裁H21.1.15)

観光会社の従業員に対する時間外労働の割増賃金が支払われていなかった事案において、取締役が会社に労基法37条を遵守させなかった点が任務懈怠に当たるとして、8人の労働者につき、それぞれ約100万円から約230万円の支払いを命じた。

経営判断型

①投資運用(福岡地裁H8.1.30判決)

生鮮魚類等の水産物を卸販売する会社において、取締役会の設定した資産運用限度額を超える無謀な株式投資を行った代表取締役に対し、約6億円の賠償を命じた。

②交際費(那覇地裁H13.2.27判決)

「交際費の支出と法人の業務遂行との間に関連がないのにもかかわらず交際費を支出することは、取締役の善管注意義務や忠実義務に違反することはいうまでもない」として、株主やその代理人のために支出した旅行費用約140万円について、会社の損害と認めた。

監視・監督義務違反型

(静岡地裁H24.5.24判決)

建設会社において、既に新規融資がなければ経営を維持できず、かつ、その財務状況も深刻な債務超過に陥っており、請負工事を完成させる可能性が極めて低いにもかかわらず、その取締役等が、全社的に行われていた「着工時までに代金の7割を顧客に支払わせるという建物の出来高を無視した回収方法」を、これを知った上で是正せず放置していたことについて、各顧客に対する賠償責任を認めた。

内部統制システム構築義務違反型

(京都地裁H22.5.25判決。大阪高裁H23.5.25判決でも是認)

「労使関係は企業経営について不可欠なものであり、取締役は、会社に対する善管注意義務として、会社の使用者としての立場から労働者の安全に配慮すべき義務を負い、それを懈怠して労働者に損害を与えた場合には同条項(注:会社法429条1項)の責任を負うと解するのが相当である」として、労働者の生命・健康を損なうことがないような体制を構築すべき義務を負っていたにもかかわらず、4ヵ月間にわたって毎月80時間を超える長時間の時間外労働を行っていた結果、従業員が急性左心機能不全により死亡した事案において、4人の取締役に、連帯して合計約8,000万円の支払いを命じた。

留意点と対策

顧問弁護士との連携

弁護士

以上のとおり、企業経営における取締役等の個人責任が追求される場面は様々で、上に挙げた事案はほんの一例に過ぎません。

場合によっては、会社が倒産してもなお(むしろ会社が倒産したからこそ)、その責任を取締役等個人に追求することも多々あります。

留意点としては、まず、①取締役等が会社法等の法令に違反した事案においては、基本的に「任務懈怠」の事実が認定される傾向にあるため、皆さんは、会社法等の法規制を熟知し、自らの行為が法律に違反していないのか、常に注意する必要があります

また、②取締役等の行為が法律には違反しないとしても、経営悪化時の不用意な経営活動や、他の取締役・従業員の違法・不当な行為の放置・看過により、多大な責任を追求されることがありえるため、会社の経営状況を熟知するとともに、事前に違法・不当な行為を回避する体制を構築しておく必要があります

上記留意点を踏まえ、個人責任追及のリスクを下げるためにも、こまめに顧問弁護士等へ相談すべきでしょう。

D&O保険への加入

現在、各保険会社が、D&O保険(会社役員損害賠償保険)を商品として売り出しています

D&O保険は、今まで述べたような取締役等役員の個人賠償責任を追求された場合に利用できる保険です。

裁判例でも紹介したように、取締役の個人責任は、場合によっては、請求・認容額が数百万円から数億円にも上るケースもありますので、事前の加入をご検討ください。

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