2016年1月からマイナンバー制度の運用が開始しました。

今回は、事業者の皆様にとって必要な、実務的な注意点について解説させていただきます。

マイナンバー対応事務

まず、事業者の方々は、以下の事務手続を行うにあたって、マイナンバー(個人用のマイナンバーを「個人番号」、企業用のものを「法人番号」といいます。)の取得・管理・提供が必要になります。

従業員との関係

①税務関係

源泉徴収票等の法定調書に個人番号を記載する必要があります。

ただし、年末調整については、2017年1月提出の源泉徴収票からとなります。

②社会保険関係

健康保険組合や年金事務所、ハローワーク等への提出書類に個人番号の記載が必要となります。

雇用保険については2016年1月から、健康保険・厚生年金保険は2017年1月から開始されます。

取引先との関係

「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」や「不動産使用料等の支払調書」に、支払を受ける者の個人番号及び法人番号の記載が必要となります。

たとえば、①年間5万円を超える外部講師への報酬や、業務委託料の支払を行う場合、②不動産の買主への賃料支払が年間15万円を超える場合、③年間100万円を超えて不動産の譲渡対価を支払う場合などが考えられます。

契約締結時点で、年間の支払額が上記金額をこえることが予想される場合には、事前にマイナンバーの提供を求めることができるとされています。

株主との関係

非上場企業においては、「配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書」に、個人番号及び法人番号の記載が必要となります(上場企業の場合は、証券保管振替機関が対応するため不要です)。

本人確認の方法と注意点

本人からの対面・郵送による提供の場合

マイナンバーの提供を受ける際には、なりすましを防止するため、原則として、①番号確認(提供された番号が正しいのか)②身元確認(番号の正しい持ち主であるか)を行う必要があります。

ただし、雇用関係があるなど、人違いでないことが明らかであると行政機関が認める場合には、②身元確認が例外的に不要とされます。

  ①番号確認 ②身元確認
A 個人番号カード
B 通知カード 運転免許証やパスポート等
C 個人番号が記載された住民票の写し 運転免許証やパスポート等

上記資料により、本人確認を行った際には、後のトラブルを回避するため、必ず記録に残しましょう

たとえば、いつ、誰が、どのようにして、本人確認を行ったかに関する確認表を作成のうえ、記録として保管しておくことが有効です。

代理人からの対面・郵送による提供の場合

代理人から提供を受ける場合、以下の資料が必要となります。

  ①代理権の確認 ②代理人の身元確認 ③本人の番号確認
法定代理 戸籍謄本・続柄記載
のある住民票の写し等
運転免許証・パスポート 個人番号・通知カード・個人
番号の記載された住民票の写し
委任代理 委任状

たとえば、国民年金の第3号被保険者の届出に関し、従業員が配偶者の代理人として、事業者にマイナンバーを提出する場合が考えられますが、先ほどと同様、雇用関係にあることから、②.代理人の身元確認は不要となります。

ただし、①代理権の確認と③本人の番号確認は省略されませんのでご注意ください。

対面・郵送以外による提供の場合

対面や郵送以外に個人番号の提供を受ける方法としては、オンラインや電話での取得が考えられます。この場合には、上記とは異なる確認資料が必要になります。

取得時の注意点

取引先からマイナンバーを取得する方法

事業者がマイナンバーを取り扱う際には、その利用目的をできる限り特定し、また、本人へ通知又は公表する必要があります。

継続的に取引を行う場合には、今後発生が予想される事務を含めた個人番号利用目的通知書を交付する、契約時に取引先と取り交わす契約書において利用目的を通知するなど、取引先からマイナンバーを取得するための手続をあらかじめ検討しておく必要があります。

アルバイト従業員が多い場合

特に、短期や一回限りのアルバイト従業員を直接雇用する場合、取得時期を工夫する必要があります。アルバイト期間終了後に連絡がとれなくなってしまうと、マイナンバーの取得に多大な手間と時間を要するからです。

そのような事態を避けるため、基本的に、アルバイト従業員からは、契約締結時にマイナンバーを取得することができるとされていますので、各社においても社内体制を整備しておきましょう。

おわりに

マイナンバーに関する規制は、ここで紹介した以外にも数多くあります。

中には罰則を伴うものもありますので、取得・管理・提供には、十分注意しましょう

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