弁護士吉原

2015年7月3日、特許法の一部を改正する法律が成立しました。

今回の法改正の大きなポイントは、「職務発明の帰属について」です。

職務発明とは、従業員による会社の仕事の中で生まれた発明のことをいいます。

現行法の仕組みでは、特許を受ける権利は、発明者(従業員)に帰属し、会社が特許出願をするには、従業員から特許権を譲り受ける形となっており、そのうえで、特許を受ける権利を会社等に承継 させた場合には、その対価を請求することができる、という規定になっていました。

ただ、その仕組みには、「発明者が特許権を他社にも譲渡するようなことがあると、会社が特許を利用できなくなってしまう」「とある開発部署がチームとして発明をしても、特許を受ける権利は特定の個人のものとなってしまう」などの会社側の問題が指摘されていました。

今回の改正点

今回の改正では、会社が、職務発明規定等に基づいて職務発明について特許を受ける権利が会社に帰属する旨の意思表示をした場合には、発明が生まれた時から、特許権は会社のものとなることになります。

一方、規則で意思表示をしていない場合には、特許を受ける権利は発明者のものになり、従前と同様になります。

そして、会社に帰属する場合及び従業員に帰属するが会社に承継させた場合に、会社から従業員へ支払われる対価については、ガイドラインで定めるものとされています。

今回の改正のポイント

今回の改正のポイントはそのままですが、①職務発明による特許を受ける権利を発明時から法人帰属させることができるようになったという点と、②従前より紛争となっていた従業員へのインセンティブ付与についてガイドラインという形でルール化されるという点です。

前者に対していえば、今まで、複数社の従業員間での共同研究等で共同発明者がいる場合など、従業員の人事異動が発生した場合など、権利の承継手続が極めて複雑になっているという問題もありましたが、特許を受ける権利を会社に帰属させることで、スピーディーな知財戦略の実施が可能になると期待されています。

また、上記の問題点として述べた、発明者たる従業員が、自分の職務発明を第三者に譲渡した場合には、二重譲渡問題が発生していましたが、今回の改正により使用者に帰属させることでこの問題を解決した形です。

4.権利の取得にかかる規定の例

特許庁は、改正でいう権利の取得にかかる規定として適用される例と適用されない例を例示しています。

適用される例

職務発明については、その発明が完成した時に、会社が発明者から特許を受ける権利を取得する。※ただし、会社がその権利を取得する必要がないと認めた時は、この限りでない。

適用されない例

  1. 発明者は、職務発明を行った時は、会社にすみやかに届け出るものとする。
  2. 会社が前項の職務発明にかかる権利を取得する旨を発明者に通知した時に、会社は当 該職務発明にかかる権利を取得する。

今回の改正では、規定においてあらかじめ会社に特許を受ける権利を取得させることを定めなければならず、適用されない例はこれに該当しないという形になります。

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