業種
ホームページやウェブシステムの企画及び制作
ご相談内容
弊所の依頼者は、ウェブシステムの受託開発を行う事業者様です。
この会社はウェブシステムの開発を受託し、契約に基づき、実際にウェブサイトを作成・公開し、相手方も利用を開始していました。
ところが、その後、相手方から「事業の収益化に不可欠な機能が未実装であり、開発も一方的に中断された」などと主張され、開発費用の返還を求める訴訟を提起されました。
当方としては、該当する機能については、当初の契約範囲に含まれておらず、開発を進めるにあたっては別途協議が必要な状況であったと認識しており、開発を一方的に中断した事実もないため、相手方の請求は不当であると考えていました。
弁護士のアドバイス・関与
まず、相手方との間で締結された業務委託契約の内容、契約締結に至るまでの経緯、その後の打ち合わせ議事録、メール等のやり取りを詳細に確認しました。
その結果、相手方が主張する機能の具体的な仕様や開発範囲は、当初の契約締結時点では確定しておらず、あくまで将来的な拡張機能の一つとして構想レベルで協議されていたに過ぎない可能性が高いと判断しました。
また、当初予定されていた機能については契約通りに開発・納品されており、開発を一方的に中断したという相手方の主張にも疑義がありました。
そこで、訴訟においては、
- 相手方の主張する機能の開発は当初の契約内容に含まれていなかったこと
- 当初の開発範囲だった機能については契約通り履行済みであること
- 開発遅延や中断の原因は、相手方による度重なる仕様変更の要求など、相手方側にも要因があったこと
などを具体的に主張・立証し、相手方の請求には理由がないことを反論していく方針をとりました。
実際の訴訟では、上記の方針に従って、証拠収集及び主張を行いました。
結果
その結果、第一審は、当方の主張を認め、相手方の請求を全て棄却する判決を下しました。
相手方はこの判決を不服として控訴しましたが、控訴審においても、当方は第一審と同様の的確な主張・立証を継続しました。
その結果、控訴審も相手方の控訴を棄却する判決を下し、当方の勝訴が確定しました。
弁護士のコメント
システム開発委託契約においては、開発範囲や仕様の明確化が紛争予防の鍵となります。
システム開発では、発注側と受注側に専門性の差があることや、発注側が完成のイメージを持ちにくいことから、本件のように、発注者側が、当初の契約範囲に含まれていなかった、あるいは具体的に合意されていなかった機能の未実装を理由に損害賠償を請求してくるケースがあります。
このような場合、契約書の内容はもちろんのこと、契約締結に至る交渉経緯や、開発中のコミュニケーションの記録が、自社の正当性を主張する上で極めて重要になります。
本件では、ご依頼者様が積極的に証拠を集めてくださったことが、相手方の主張の不当性を的確に反論することにつながり、第一審・控訴審を通しての勝訴に繋がったと考えております。
システム開発に関するトラブルでお困りの企業様は、ぜひお早めに専門家である弁護士にご相談ください。