ご相談企業様について
業種
サービス業
ご相談に至るまでの経緯
今回のクライアント様は、新たに採用した従業員の勤務態度が著しく悪かったため、採用から数日後に口頭で解雇を通達しました。
なお、クライアント様では試用期間という制度を設けられておりませんでした。
解雇から約2週間後、従業員の代理人弁護士から内容証明郵便で通知が届きました。
相手方代理人の主張は次のとおりでした。
- 「今回の解雇は客観的に合理的理由を欠くものであり、社会通念上相当であるとは認められない。」
- 「したがって、解雇権の濫用にあたり、解雇処分は無効である。」
- 「解決金として未払い分の賃金を含む約270万円を請求する。」
クライアント様自身が相手方代理人と何度か交渉を行いましたが、平行線をたどったため、弊所にご相談をいただきました。
解決まで
クライアント様は早期の解決を希望しており、解決金として6か月分の給与を支払うという内容であれば和解しても構わないというご意向でしたので、さっそく相手方との交渉に移りました。
当方から相手方に対し、試用期間が短いことからすれば本来は3か月分が妥当である等の意見を述べるなどして粘り強く交渉し、最終的に、給与6か月分を解決金とする内容で合意することができました。
結果的に当初の請求額の約半分の額で合意に至り、ご相談から約2週間でのスピード解決となりました。
弁護士のコメント
労働契約法16条には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。
日本の労働法制では使用者が労働者との労働契約を一方的に解除することは非常に厳しく制限されており、不用意に解雇を行うと今回のように不当解雇であるとして争われる可能性が高くなります。
そして、解雇が無効と判断された場合には、解雇期間中の給料を支払わなければならなくなってしまいます。
このようなリスクを負わずに問題社員を退職させるには、粘り強く指導や懲戒処分を行いながら自主的な退職を促し(退職勧奨)、解雇は最終手段として行うことになります。
今回のクライアント様は、弊所にご相談をいただく前に、相手方に対して今回の解雇は整理解雇に当たるので違法ではないという主張も行っていました。
しかし、整理解雇が解雇権濫用にあたらず有効であるといえるためには、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③被解雇者選定の合理性、④手続の相当性が必要であるとされており、やはり簡単に認められるものではありません。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で事業活動の縮小を余儀なくされ、従業員を雇用し続けることが難しくなっている企業が増えているかと思います。
そのような場合は、まず特例措置が実施されている雇用調整助成金などを活用して雇用を継続できるか検討し、それでも解雇が避けられないという判断に至ったときに退職勧奨や整理解雇等の手段を検討することをお勧めいたします。
従業員を解雇したいとき、解雇した従業員から不当解雇であると訴えられているときは、できるだけ早く弁護士にご相談ください。