当社で開発した新商品を「たくみちゃん」という名称で商標登録して販売したいと考えています。

商標検索システムで検索をした結果「たくみちゃん」での商標登録はありませんでしたが、同業のA社が地方都市で「たくみちゃん」という同種の商品を販売していることがわかりました。

このような場合に商標登録は可能なのでしょうか?

また、「たくみちゃん」の名称を使用したり商標登録することで、法律上問題が生じるのでしょうか?

商標登録の可否について

弁護士澤戸

登録申請が拒絶される可能性はありますが、とりあえず申請してみても良いのではないかと思われます。

商標法4条1項10号は、商標登録を受けることができない商標として、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するもの」を規定しています。

このうち、「需要者の間に広く認識されている商標」とは、全国的に認識されている商標だけでなく、ある一地方で広く認識されている商標も含むとされます。

具体的には、数県にまたがる程度に相当広い範囲で多数の需要者に知られている場合には、周知であるされる可能性が高いです。

したがって、A社が複数の都道府県でCM広告を行うなどして「たくみちゃん」の名称を一般消費者にアピールしているような場合には、「たくみちゃん」が周知された名称に当たるとして、申請が拒絶される可能性があります。

とはいえ、申請自体は自由に行えるので、拒絶される可能性があることを前提に申請してみるのもよいでしょう

商標登録後に使用差止めを求めることができるか

商標法32条1項の規定

商標法32条1項前段は、「他人の商標登録出願前から…その商標登録出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標の使用をしていた」者に対し、「その商標登録出願の際…現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとき」は、自分の未登録周知商標を継続して使用してよいものとして、先使用権を与えています。

このうち、周知性については、商標法4条1項10号の場合よりも緩やかに解することができるとされています。

過去の裁判例では、一県内の一地方と隣接県の一部で周知である場合に先使用権が認められた事例があります。

したがって、少なくとも登録出願時にA社が「たくみちゃん」の名称を使用していた地域では、A社の先使用権が認められ、商号使用の差止請求が認められない可能性が高いです。

先使用権が認められた場合の支障

先使用権が認められることから、A社は「たくみちゃん」の名称を継続して使用できることになります。

ただし、先使用権の効力が及ぶ範囲は、登録商標出願時点において先使用権が存在した範囲に限られるため、A社が新たに全く別の地域で使用することは防ぐことができます

また、A社が「たくみちゃん」の名称を使用する地域周辺において商標を用いる場合には、A社に対し、出所混同防止表示の付加を請求することができます。

たとえば、「本社は、株式会社●●とは営業上、組織上関係ありません。」などの表示がそれにあたります。

出所混同防止表示の付加請求権の限界

出所混同防止表示の付加請求権は絶対的なものではなく、先使用者による使用実態と商標権者による使用実態との関係に照らして、混同防止表示を行うよう求めることがいかにも不合理と考えられるときは否定されることがあるとされます。

たとえば、名称を使用する場所が離れているために誤認混同が生じる可能性がないような場合には、出所混同防止表示の付加請求権が認められない可能性があります。

先使用権が認められる地域周辺に他社が新規出店する可能性があること

先使用権が認められる範囲は、従前から登録商標を使用して事業を行っている場所だけでなく、その場所で登録商標を使用して事業を行ってきたことにより蓄積された既存の評価・信用、ないしはこれを基礎として形成された既存の取引秩序が及ぶと認められる地域も含むとされます 。

そのため、A社が名称を使用していた地域周辺では、A社が新たに店舗を出店して「たくみちゃん」の名称を使用したり、従前は使用していなかった店舗でも「たくみちゃん」の名称を使用することが認められる可能性があります。

不正競争防止法に基づく差止請求等について

A社に先使用権が認められる地域では、不正競争防止法に基づき、「たくみちゃん」の商号の使用差止や損害賠償請求が認められる可能性があります

不正競争防止法2条1項1号は、不正競争の一類型として、「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」(混同惹起行為)を規定しています。

そして周知性については、全国的に周知である必要はなく、少なくとも一地方において周知であれば足りるとされます 。

裁判例には、特定の市区町村を中心とした地域において周知であれば足りると判断したものがあるようです。

そのため、商標法32条1項における周知の範囲と同程度かそれ未満の地域における周知があれば足りると判断されるものと思われます。

したがって、A社が現に「たくみちゃん」の名称を使用している地域では、混同惹起行為があるとされる可能性が高いです。

混同惹起行為に当たることを避けるには、A社が「たくみちゃん」の名称を使用している地域及びその周辺(顧客が存在するであろう地域)では、「たくみちゃん」の商標を使用するのを差し控えるべきと考えられます。

一般不法行為(民法709条)成立の可能性について

不正競争に当たらない場合でも、営業上の利益を侵害する一般不法行為が成立する余地がありますが、その立証が成功する可能性は低いため、考慮しなくて良いと思われます。

それは、不正競争に当たらないにもかかわらず不法行為として違法性があると認められるのが、行為態様が自由競争の範囲を著しく逸脱し反社会性が強いものであるといった特別の事情がある場合に限るとされるためです。

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