はじめに —「上司の指示に従わない」モンスター社員が増えている

近年、職場で「上司の指示に繰り返し従わない」「業務命令を拒否する」といった従業員(いわゆる、モンスター社員)への対応に悩む企業が増えています。
上司、会社の指示を無視することは業務停滞や管理職の負担増加、他の社員の士気低下等につながり、放置すれば組織全体に重大な悪影響を及ぼします。
一方で、企業側が過度に強硬な対応を取ると、逆に解雇無効や退職強要といった法的リスクを招くこともあります。
今回は、このような従業員に対して、会社がどのように対応すべきか、解説していきます。
1. 理由の把握と事実関係の確認(ヒアリング)
- 当該社員と面談を行い、従わない理由(健康問題、ハラスメントの訴え、労働条件の争い、単純な反抗等)を聞き取ります。場合によっては、産業医や労務担当も交えた方が良いケースもあります。
- 第三者の証言、メール・チャット等のログ、勤務記録などで客観的事実を集めます。
ハラスメントやメンタル不調が背景にある場合、安易に懲戒に進むと不当とされるリスクがあります。
被害者保護やプライバシー配慮にも留意が必要です。
2. 書面での指導・改善指示
- 口頭注意だけで終わらせず、「注意書」「業務指導書」「改善指示書」などを作成し、5W1H(いつ・どこで・誰が・誰に・何を・どのように)を明示します。改善すべき点と期限、後続措置(懲戒等)を明確に記載します。受領印やメール送付で受領を記録しましょう。
- 改善計画(PIP:Performance Improvement Plan)を設定し、定期的に進捗を評価します。
書面は証拠になります。「繰り返し指導をしていたにも関わらず改善が見られなかった」という事情は、後に行う懲戒処分の妥当性を高める要素にもなります。
なお、書面は良くも悪くも形に残りますので、感情的表現は避け、客観的かつ具体的な内容になるように心がけましょう。
3. 配置転換・業務軽減などの配慮
- 指示拒否の原因が部署や業務のミスマッチである場合、配置転換や業務内容の見直しで改善が図れることがあります。健康上の問題がある場合は産業医の意見に基づく配慮を検討します。
ただし、労働者に過度な負担を強いるような配置転換や不利益取り扱いは、逆に差別や不当処分とされる可能性があるため、注意が必要です。
4. 退職勧奨
- 従業員への配慮にも限界があります。会社が配慮を尽くしても、従業員の問題やミスマッチが解消できない、という場合は、お互いのためにも退職の方向で話をするという方法もあります。いわゆる退職の勧奨(勧め)です。
- ただし、あくまで「勧奨」ですので、会社が退職を強要したり、実際上拒否できない状況で退職合意させたりしたとみなされる場合は、「実際上は解雇である」と判断され、その合理性・相当性が厳しく判断されることになります。
5. 懲戒処分の検討と手続
- 指導で改善が見られない場合、けん責・減給・出勤停止・降格・懲戒解雇などを段階的に検討します。懲戒を行う際は、就業規則に「懲戒事由」と「手続」が明示されているか確認し、その規程に従って進める必要があります。
- 懲戒は、会社から従業員への一方的制裁ですので、その相当性(懲戒事由と処分の均衡)についても検討が必要です。
いきなり懲戒解雇に踏み切ると、裁判で「処分の相当性がない」として懲戒無効とされるリスクが高まります。
軽い処分から段階的措置を踏むことで、「再三指導したが改善しなかったため解雇した」との主張が通りやすくなります。
リスクを取りたくないのであれば、懲戒解雇は最終手段、と思っておくべきです。
6. 再発防止と就業規則の整備
- 会社の規則や運用が不十分であるために、問題が肥大化してしまうケースもあります。問題が起きたときには、再発防止に向けた社内の見直しも重要です。
- 就業規則の懲戒規定や業務命令のルール、ハラスメント対応フロー、記録様式を整備しましょう。管理職向け研修や定期的な労務監査で再発を防ぎます。
※当然ですが、ルールは、現場運用と整合させることが重要です。
弁護士を入れるメリット

モンスター社員を含む問題社員への対応は、法的知識と交渉力が必要となります。
また、問題社員の行動やこれに対する指導の記録・証拠を残すことも重要です。
初動での適切な対応と書面の整備が後の紛争防止に直結することもあります。
弁護士を入れることで、以下のような対応が可能になります。
- 業務命令の法的妥当性や就業規則の確認
- 指導書、懲戒通知、退職合意書など、後の紛争に備えた書面の作成・チェック
- 懲戒や解雇の手続(弁明機会の与え方、証拠保全)に関するアドバイス
- ハラスメントや健康問題が絡む場合の対応方針(労使が絡む場合もあります)
- 紛争化した際の交渉・労働審判・訴訟対応
特に、弊所では、問題社員対応について、ただ法的リスクを説明するだけではなく、「じゃあどうすればよいのか」との問いについて、会社意向を踏まえた実務的な解決策を提案しています。
場合によっては、「リスクを取ってでも問題社員に毅然と対応すべき」というケースもあると考えているからです。
弊所には労務紛争に精通した弁護士が在籍しておりますので、対応に不安がある場合はお早めにご相談ください。
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