1. はじめに

弁護士荒木俊太

「解雇した従業員から、給与をさかのぼって支払えと言われた」

「働いていない期間の賃金まで払う必要があるのか?」

近年、このような相談が増えています。

いわゆる「バックペイ」という問題です。

バックペイは、解雇・雇止めトラブルにおいて、企業に多額の支払い義務が生じる可能性がある非常に重要な概念です。

本コラムでは、バックペイの基本からリスク、実務上の注意点、について解説するとともに、弊所での実際の解決事例をご紹介します。

2. バックペイとは

バックペイ(Back Pay)とは、解雇や雇止めが無効と判断された場合に、解雇日以降の未払い賃金をさかのぼって支払うことをいいます。

仮に従業員が解雇後に出社していなかったとしても、「解雇が無効=労働契約は継続していた」と判断されれば、働いていない期間の賃金も支払義務が生じるのが原則です。

労働法には「ノーワーク・ノーペイ(働かなければ賃金なし)」という原則がありますが、解雇が無効とされた場合は、

  • 働けなかった原因は会社側にある
  • 従業員が働く意思と能力を有していた

と評価されるため、ノーワーク・ノーペイの例外としてバックペイが認められるのです。

3. バックペイのリスク

リスク

バックペイの最大のリスクは、企業が想定していない高額な支払いを突然求められる点にあります。

特に解雇トラブルでは、裁判や労働審判が長期化しやすく、その間もバックペイは積み上がっていきます。

解雇無効期間が長期化することによるリスク

例えば、月給30万円の従業員を解雇し、解雇無効と判断されるまでに2年かかった場合、

  • 30万円 × 24か月 = 720万円

これに加えて、

  • 賞与
  • 残業代
  • 遅延損害金

が加算されるケースもあり、最終的な支払額が1000万円を超えるケースもあります

「早く解決すればよかった」「解雇するときに慎重な判断をしておけばよかった」と後悔される経営者の方も多いです。

4. 解雇した後に転職してもバックペイを払うことがある?

「すでに別の会社で働いているなら、バックペイは不要では?」

このような疑問を持たれる方も多いですが、結論としては支払義務が生じる場合があります

確かに、転職先で得た収入は「中間収入」として一部控除されますが、全額控除されるわけではありません

また、

  • 転職先の給与が低い
  • 一時的・不安定な就労
  • 解雇がなければ得られなかった収入と評価されない

場合には、中間収入としての控除がほとんどされず、バックペイの支払額が大きく残ることもあります。

5. バックペイの計算方法

電卓

バックペイの基本的な計算方法は以下のとおりです。

  1. 解雇日から解決日までの期間を確定
  2. その期間に支払われるはずだった賃金額を算出
  3. 中間収入がある場合は一定額を控除
  4. 必要に応じて遅延損害金を加算

注意すべきなのは、「会社が想定するよりも高額になりやすい」点です。

基本給が高い場合のみならず、役職手当や固定残業代がある場合も、金額が高額になりがちです。

6. 実際にあった相談事例・解決事例

【不当解雇とバックペイ請求への対応事例|早期解決で大幅減額に成功】

相談概要

入社から約2か月で休職が続いた従業員を会社が解雇したところ、不当解雇であるとして弁護士から内容証明が届き、復職までの給与(バックペイ)と慰謝料100万余りを請求された。

解決方針

まず、会社が行った解雇が法的に有効かどうかを判断するため、解雇に至る経緯や会社側の対応状況を丁寧に聴取しました。

その結果、本件では解雇が無効になる可能性が低くないとの結論に至りました。

そこで、全面的に争うのではなく、相手の主張にも一定の合理性があることを前提に「請求額を減額する方向」で交渉を進める方針としました。

相手の当初の請求は、バックペイ約100万円と慰謝料110万円を含む金額でした。

しかし交渉の結果、最終的にバックペイと慰謝料を合わせて80万円の支払いで合意し、大幅な減額に成功しました

なお、バックペイは時間が経つほど日数に応じて増えていくため、対応が遅れるほど会社側の負担が大きくなります。

また、訴訟に発展すれば、付加金など追加請求のリスクもあるため、早期の示談解決が重要です。

本件では、弁護士が受任後速やかに相手代理人との認識共有及び金額調整を進めたため、依頼からわずか2週間ほどで示談に至ることができました。

対応弁護士の所感

バックペイの問題については、争うべきときは全面的に争い、分が悪いときはできる限り早期解決を図る、という柔軟かつメリハリのある対応が必要です。

分が悪いのに争ってしまうと、バックペイの金額が増えてしまいますし、相手方に早期解決のメリットを提示するタイミングを逸してしまうことにもなりかねません。

今回のケースでは、当方の対応の迅速さが、大幅な減額という結果に繋がったように思います。

7. 当事務所によるサービス

当事務所では、バックペイ・解雇トラブルに関して以下のサポートを行っています。

  • 解雇の有効性に関する検討・事前のアドバイス
  • バックペイのリスクの検討・アドバイス
  • 労働審判・訴訟対応
  • 早期解決を見据えた交渉戦略の提案

また、「問題が起きてから」だけでなく、「問題が起きる前」の予防法務にも力を入れています。

8. おわりに

バックペイは、対応が遅れるほど企業のリスクが膨らむ問題です。

「まだ大丈夫」と思っている間に、数百万円、数千万円規模の負担になることもあります。

  • 解雇を検討している
  • すでに元従業員とトラブルになっている
  • 内容証明や通知書が届いた

このような場合は、できるだけ早く専門家へご相談ください

当事務所では、経営者の立場に寄り添い、最小限のリスクで最善の解決を目指します

まずはお気軽にお問い合わせください。

  • 荒木俊太弁護士
  • この記事を書いた弁護士

    荒木 俊太(あらき しゅんた)
    たくみ法律事務所 福岡オフィス所属
    佐賀県神崎郡出身。九州大学法学部、九州大学法科大学院を経て、弁護士登録。運送業者を始めとする複数の企業を顧問弁護士として支援し、労災、問題社員、誹謗中傷など、中小企業を取り巻く法律問題に幅広く関与。

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