面談

従業員のメンタルヘルス不調は経営者にとって頭の痛い問題です。

特に医師による診断書が提出されて休職を求められるケースでは、会社は急な対応を迫られます。

精神障害による労災の請求件数は2000年には212件だったのが2015年には1,515件と急増しており、数千万円の高額の賠償額が認められた事例もあります。

背景には、うつ病などのメンタル疾患が病気として社会的に認知されたことや、インターネット等で労働者向けの情報が広く発信されて権利意識が高まっていることがあると考えられます。

今回は従業員がうつ病などのメンタル疾患の診断書を提出して休職を申請してきたときの対応について解説いたします。

事例

問題になるのは、たとえば次のような事例です。

運送会社の経営者であるAは、ある朝、経理担当の従業員Bから「上司であるCのパワハラが原因でうつ病になったので、明日から1か月間休職したい」と突然申し出を受けた。

Bが提出した医師による診断書には、「うつ病のため1か月の療養を要する」という内容が記載されている。

Cのパワハラなど聞いたことがなく、Bが先日の飲み会で楽しそうにしている様子を見ていたAは、「Bは嘘をついているのではないか」と疑いを抱いている。

休職するにしても、せめてBが担当している業務を他の従業員に引き継いでからにしてもらえないか。

ひとまずBとの面談の約束をしたAだが、はたしてどう対応すべきか…?

まずやるべきこと

従業員の話を聞く

会社が最初に行うべきことは、その従業員との面談の場を設けてメンタル疾患の状況や従業員が認識している事実関係の聞き取りを行うことです。

面談の際には「従業員の言い分を聞く」という姿勢を徹底し、共感を示しながら真摯に話を聞くようにしましょう。

間違っても「仮病を使っているのではないか」「パワハラなどでっち上げではないか」などと従業員を疑うような言動はしてはいけません。

上の事例のように、「ついこの間まで元気だったのにメンタル疾患だなんて、本当だろうか」と疑問を感じるケースもあるかもしれません。

しかし、医師から診断書が出されている以上は労基署も裁判所もメンタル疾患を事実として認定する可能性が高いのが現実です。

会社の担当者が疑うような態度を見せると、従業員に「会社に相談しても無駄だ」と思われてしまい、労基署や弁護士に相談して紛争に発展する可能性が高くなります。

逆に、「会社がきちんと話を聞いてくれた」と思ってもらえればトラブルには発展しづらくなります。

後々の紛争を回避するためには初動が肝心です。

聴取の後に事実関係の調査を

もちろん、従業員の言い分を全て事実として受け入れなければいけないわけではありません

聞き取りの結果を元に必要な調査を行い、事実関係の確認を行いましょう。

何人で対応すべきか

大人数での対応は避ける

メンタル不調に限ったことではありませんが、個々の従業員と面談をするときに会社側があまり大人数で対応をすることは避けるべきです。

会社側の人数が多ければそれだけ圧迫的になりやすく、後になって「圧力を感じて言いたいことが言えなかった」と主張される可能性も生じます。

会社側は2名程度で対応し、主に話を聞く担当者と記録を残す担当者に分けるのが理想的でしょう。

言うまでもありませんが、ハラスメントがメンタル疾患の原因であるケースでは、加害者とされている人物は面談から外すべきです。

弁護士に同席してもらう?

「弁護士や社労士に同席を依頼すべきか」というご質問もよくいただきます。

この点については、メリットとデメリットがありえます

メリットは、従業員に対して「第三者が立ち会うのだからちゃんとした対応をしてもらえるだろう」という期待と安心感を与えることができる点です。

また、会社の担当者も専門家が立ち会うことで心強さを感じることでしょう。

他方で、弁護士や社労士は完全に中立的な立場ではなく基本的に会社側に立ちますので、かえって従業員に警戒心を与えてしまうかもしれません。

また、前述のように会社側の人数が増えると圧力をかけていると思われるおそれもあります。

業務とメンタル疾患の因果関係

長時間労働やハラスメントなど、会社の業務とメンタル疾患に因果関係がある可能性があるケースでは、より一層の注意が必要です。

まずは従業員本人からの聞き取りに基づいて勤務状況やパワハラの有無などの事実関係を調査し、メンタル疾患との因果関係を検討していくことになります。

具体的な調査の方法についてここで詳しくはご説明しませんが、プライバシーなどに配慮しながら迅速かつ適切に進めていく必要があります。

いつから休職させるか

従業員が休職を申し出たとき、会社としてはせめて引き継ぎを行ってから休んでほしいと思うかもしれません。

休職前にしばらく働いてもらうよう指示することに問題はあるのでしょうか。

会社の事情もあるとは思いますが、医師から「休むべき」という診断が出ているにもかかわらず働かせることは基本的に避けるべきです。

もし「せめて明日だけは来てほしい」という指示を出した翌日の朝にその従業員が自殺してしまうような事態になれば、裁判所や遺族から「会社が業務命令で出勤を指示し、その結果、自殺に至った」という評価を下されるおそれがあるからです。

面談は録音できる?

紛争になりそうな案件は録音を

「従業員とのやり取りを録音することは問題ないか」というご質問をよくいただきます。

全ての場合において録音が必要だとは思いませんが、紛争化の可能性がある案件であれば将来に備えて録音するべきでしょう。

録音は従業員に秘密で行うのではなく、「〈言った言わない〉のトラブルを避けるため、念のために録音させてもらいたい」という趣旨の説明をし、従業員の同意をとったうえで録音するのが良いでしょう。

従業員が録音している可能性も

当然ながら、従業員が面談を秘密で録音しているケースは多いです。

録音されている可能性があることは想定したうえで適切な対応を心がけましょう。

最後に

メンタル疾患を巡る問題は様々

弁護士江藤豊史

メンタル疾患を抱えた従業員と対応するときは、不用意な言動が会社に対する不信感に繋がり、大きなトラブルに発展することが少なくありません

従業員のメンタル疾患を巡っては、今回ご説明した休職の申し出を受けたときの対応のほか、従業員が休職期間中に問題行動をしたときの対応、メンタル疾患従業員と連絡がつかない場合の対応、復職や退職の判断、復職時の配置転換、復職支援など様々な問題があり、多くの裁判例が出されています。

また、ひと言でメンタル疾患と言っても、他人に攻撃的になるケースや妄想・幻覚のあるケースなど様々です。

メンタル疾患の種類によっても異なる対応が求められます。

慎重な対応を

メンタル疾患従業員は、会社にとって微妙な対応が求められる問題です。

専門家の助言のもとで慎重に対処するようにしましょう。

弁護士江藤豊史

大分県出身。
専門学校講師、裁判所職員を経て弁護士へ。
法律的・経営的視点から企業に最も有益なサービス・ソリューションを提示できるよう研鑽を積んでおりますので、お気軽にご連絡ください。

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