全国ニュースでも広く取り上げられていましたのでご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、マンション管理組合の理事会が理事長を解任できるかどうか争われていた事案で、平成29年12月18日、最高裁判所は、マンションの管理組合の理事長を理事会で解任できる、との判断を示しました。
今回はこの判決について解説いたします。
事案の概要
原告の男性は平成25年3月に福岡県久留米市のマンション管理組合の理事長に就任しましたが、管理会社の選定を巡って他の理事と対立していたところ、理事会は、男性が欠席した理事会において男性を解任し新たな理事長を選任する決議をしていました。
これに対し、男性が、理事会による解任決議は無効であると主張して争っていました。
マンションにはそれぞれ管理規約が存在します。
今回問題となったマンションの管規約では、理事長の「選任」は「理事の互選」と規定している一方、理事長の「解任」については規定が存在しなかったことから、「理事会」による「解任」決議が有効かどうか問題となりました。
裁判所の判断
1審及び2審は、管理規約上に理事会の決議で理事長を解任できる旨の規定が存在しないことを理由に、理事会による解任決議は無効と判断しました。
これに対し、最高裁は、管理規約は理事長の「選任」は「理事の互選」と規定しているところ、互選で選任した理事長の職を過半数の一致で解くことも理事会に委ねる趣旨であるという理由で、管理規約上に理事会の決議で理事長を解任できる旨の規定がなくても、理事会による理事長の解任決議は有効、と判断しました。
考察
マンションの共有部分(ロビーやエレベーター)や敷地についての管理を行う団体を管理組合といい、マンションの専有部分(各部屋)を購入し所有者となった者は自働的に管理組合の構成員になります。
そして、多くの管理規約では、管理組合の組合総会で理事を選任し、理事の互選あるいは理事会の過半数決議によって理事長を選任する決まりとなっており、理事長は組合総会や理事会で決定した事項に関し執行する権限が与えられています。
株式会社でいえば、
- 組合総会=株主総会
- 理事=取締役
- 理事会=取締役会
- 理事長=代表取締役
のようなものです。
マンションの管理方針をめぐって理事長と他の理事、組合員(住民)が対立することは多くあります。
全国のマンション管理組合の約9割は国土交通省作成の標準管理規約をもとにそれぞれの管理規約を作成していると言われていますが、国土交通省作成の標準管理規約でも同様に、理事長の「解任」について規定が存在しませんので、今回のマンション同様に、管理規約に理事長の解任について規定が存在しないマンションが大半だと思われます。
最高裁は、「管理規約上に理事会で解任できる旨の規定がなくても解任できる」と判断していますので、理事長の解任は組合総会の決議事項であるという旨の規定がない限り、これからは、理事会決議のみで理事長を解任できることになったといえます。
最後に
国土交通省が作成する標準管理規約も今回の最高裁判決の内容をふまえて見直される可能性が高く、各マンション管理組合の管理規約も変更の動きが出てくるでしょう。
管理規約のチェック・変更や、その他建て明け等不動産にまつわる法律問題は弁護士にご相談ください。