障害者に対する募集

2013年に、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら矯正する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、「障害を理由とする差別の解消に関する法律(通称、「障害者差別解消法」)」が制定されました。

保険代理店における態勢整備においては、高齢者募集時については、マニュアル等の整備等が浸透しているように思われます。

しかし、障害者に対する募集においてはまだ対応が不十分な代理店が多く見受けられるところです。

監督指針においては、障害者への対応についての主な着眼点として、

「障害者への対応に当たって、『金融庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針』(平成28年金融庁告示第3号)の各規定に則った適切な対応を実施しているか。また、対応状況を把握・検証の上、対応方法の見直しを行う等、必要な内部管理態勢が整備されているか。」

と規定されています(監督指針Ⅱ-4-11-2)。

また、2016年2月に日本損保協会が「障がい者への対応にかかる基本方針」が公表されています。

そこでは、

  1. 障がい者の社会的障壁の除去のために、不当な差別的取扱いは行わず、障がいの状態や性別、年齢に応じた必要かつ合理的な配慮に務めます。
  2. 障がいの状態に応じたコミュニケーションを大切にし、障がい者との建設的な対話による相互理解に努めます。
  3. 障がい者の人格と個性を尊重し、障がいによって分け隔てられることのない共生する社会の実現に向け、研修・啓発活動の具体的取組を進めます。

とされています。

いずれも抽象的であり、具体的な募集の場面でどのようにするかについては個別の募集人による対応に委ねられています。

そこで、比較的具体的に記載されている『金融庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針』別紙で記載される具体例を参考にして対応する方法が考えられます。

『指針』では、下記のように意思疎通についての配慮などの具体例が記載されています。

  • 入店時に声をかけ、障害の状態を踏まえ、希望するサポートを聞き、必要に応じて誘導する。
  • (身体的障害のある顧客に対しては、)書類の開封、受渡し等の対応が困難な場合に、必要なサポートを提供する。
  • (視覚に障害のある顧客に対しては、)窓口まで誘導し、商品の内容を分かりやすい言葉で丁寧に説明を行う。また、顧客の要請がある場合は、取引関係書類について代読して確認する。

障害についての理解を深めることが重要

弁護士小林

ただおそらく障害者対応として最も難しいのは、顧客の障害についての把握かと思われます。

身体的障害等の場合には、対応がある程度想定できる部分はあろうかと思われますが、外見で判断しづらい場合においては、事前アンケート等によって、障害の有無を尋ねる方法なども考えられるところです。

もっとも、知的障害や精神障害(発達障害を含む)等により本人の意思表明が困難な場合において、確認が難しい場合もあるため、上記対応だけでは十分ではなく、障害の内容や程度を判断するための募集人による対話等での発見・確認作業といったフォローが必要になってきます。

そのためには、募集人に対する社内研修等で、障害についての理解を深めるための内容にふれることなどは必要になってくると思われます。

ちなみに、障害について、「障がい」「障碍」と表記すべき等の議論がありましたが、特に結論が出ているものではありません。上記では、法律表記と同様「障害」と記載しておりますが、単なる文字の問題ではなく、障害についての理解し配慮を深めていくことが重要です。

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