ねずみ講との違いは?特商法が規制する連鎖販売取引(マルチ商法)について解説

ねずみ講との違いは?特商法が規制する連鎖販売取引(マルチ商法)について解説

悩み

「マルチ商法」とは、商品を次々と転売しつつ、ピラミッド状に組織を拡大していく販売形態をいいます。

「ある販売組織の会員が組織外の人に商品を買わせて新規会員にする」「その新規会員がさらに別の人に商品を買わせて会員にする」という連鎖で成り立っており、「ネットワーク・ビジネス」「マルチ・レベル・マーケティング」「ピラミッド・セリング」などと呼ばれることもあります。

特定商取引法(特商法)では、「連鎖販売取引」と定義されています

マルチ商法は法律上禁止されているものではありませんが、組織が拡大することで加入者の利益確保が難しくなることや、加入時に多額の費用を支払わされるなどの問題があることから、特商法で厳格なルールが定められています

あなたの会社が外部の個人事業主と代理店契約を結んで商品等の販売を外部委託している場合に、契約内容によってはそれが連鎖販売取引に当たり、その代理店契約をクーリング・オフされてしまうケースも考えられます。

このページでは特商法が規制する連鎖販売取引について解説いたします。

連鎖販売取引とは

連鎖販売取引とは、特定利益を収受し得ることをもって誘引し、その者と特定負担を伴う連鎖販売取引をするものとされています。

ねずみ講との違い

連鎖販売取引と同じようなピラミッド型の取引に、「ねずみ講」があります。

連鎖販売取引とねずみ講の違いは、連鎖販売取引が商品の販売を目的とした組織であるのに対して、ねずみ講はもっぱら金品の受け渡しを目的とする組織である点にあります。

ねずみ講は「無限連鎖講の防止に関する法律」という法律により全面的に禁止されており、違反すると懲役や罰金の刑が科せられることがあります。

特商法上の連鎖販売取引の適用対象

連鎖販売取引において特商法が保護対象とするのは、消費者だけでなく、個人事業主を含みます

そのため、会員を代理店や協力店などと呼んだり、契約を代理店契約やフランチャイズ契約などにしたとしても、取引の相手方が店舗等によらないで商品等を販売等する個人に当たる場合には特商法が適用されます。

連鎖販売取引の要件

連鎖販売取引に当たるとされるのは、商品の再販売等の取引について、

  1. 特定利益の収受可能性があり
  2. 1をもって加入者を誘引するものであり
  3. 加入者に特定負担をさせ
  4. 3を伴う取引である

連鎖販売取引において特に重要となる概念は、1の「特定利益」と、3の「特定負担」です。

特定利益とは

特定利益とは、特商法上、「その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあっせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあっせんをする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部」と規定されています。

簡単に言うと、外部の人間を新規加入させたり、加入者を昇格させた場合に、これらの者が支払った金品を原資として配分される利益のことを言います。

たとえば、「友達を私達の会に入会させたら1万円の紹介料がもらえる」や「下位の入会者に商品を売ったら、売値の1割が手数料としてもらえる」といった場合の1万円や売値の1割が特定利益に当たります。

紹介料、販売マージン、ボーナスなどと呼ばれることがあります。

特定利益の源泉となる出捐をする者については、「他の者」あるいは「他の者以外の者」である必要があります。

「他の者」あるいは「他の者以外の者」には、連鎖販売取引の組織に加盟する者のほか、これから加盟しようとする者も含みますが、商品の最終消費者のように、新たな販売員として販売活動をすることを予定していない者は含まないとされます。

特定負担とは

特定負担とは、連鎖販売取引に伴う負担であり、再販売を行う者が負うあらゆる金銭的な負担が含まれます。

たとえば、再販売を行うために必要なもの(スターター・キットなど)として購入する場合や、再販売をするための商品を購入する場合の購入代金、入会金、登録料、研修参加費用などです。

特商法による規制

連鎖販売取引を行う事業者は、様々なルールに従わなければなりません

氏名等の明示

連鎖販売取引を行う事業者は、勧誘を開始する前、連鎖販売業を行う者の氏名・名称、特定負担を伴う取引について勧誘をする目的であること、販売しようとする商品・サービスの種類を明示しなければなりません。

違反した場合は、是正措置や取引停止命令等の対象になります。

書面の交付

連鎖販売取引を行う事業者は、交渉を始めてから契約を締結するまでの間に、連鎖販売業を行う者の氏名・名称、商品の名称・種類・性能、特定利益や特定負担に関することなどを記載した書面(概要書面)を交付しなければなりません。

また、契約を結んだら遅滞なく、概要書面に記載すべき事項の他に契約年月日などを記載した契約書面を交付しなければなりません。

違反した場合は、取引停止命令等の対象となるほか、懲役刑や罰金刑が科されることがあります。

広告における規制

連鎖販売取引を行う事業者が広告をする場合、商品やサービスの名称・種類、特定負担に関する事項や特定利益の根拠となる具体的な計算方法を明示しなければなりません。

また、商品の性能や品質、特定負担や特定利益などについて、著しく事実に相違する表示をしたり、実際よりも著しく優良または有利と誤認させるような表示をしてはならないとされ、虚偽広告や誇大広告が禁止されています。

違反した場合は、改善措置や取引停止命令等の対象となるほか、懲役刑や罰金刑が科されることがあります。

勧誘行為における規制

連鎖販売取引を行う事業者が勧誘をする場合、虚偽の説明をして契約を結ばせること(不実告知)や、不都合な事実を意図的に黙って契約を結ばせること(事実不告知)、強引な勧誘などにより威迫・困惑させて契約を結ばせること、勧誘目的を隠して呼び止めて同行させ、公衆が出入りしない場所で勧誘することなどが禁止されています。

違反した場合は、改善措置や取引停止命令等の対象となるほか、懲役刑や罰金刑が科されることがあります。

特商法による消費者の保護

クーリング・オフ

連鎖販売取引は、クーリング・オフの対象とされています

訪問販売などの他の取引と違い、起算日から20日間とクーリング・オフできる期間は長期間です。

中途解約権

連鎖販売取引では、取引参加後しばらくしてから期待したとおりの販売実績とならなかったり、途中で事情が変わったりすることがあります。

そのため、クーリング・オフ期間が経過した後でも一定の条件を満たすときには中途解約権が認められています

また、中途解約に伴う損害賠償額については、特商法で上限金額が決められ、その上限金額を超える違約金の定めがあったとしても超える分を請求することができないなど、一定の制限が設けられています。

取消権

特商法は、連鎖販売取引において不実告知や事実不告知が行われた場合に、加入者による取消権が認められています

すなわち、連鎖販売業者から不実告知や事実不告知をされたことにより加入者が事実を誤って認識して契約を結んだ場合は、加入者はその契約を取り消すことができます。

最後に

弁護士野中

このように、連鎖販売取引は違法ではないものの厳しい規制がされており、違反すれば取引停止等の行政処分や、罰金刑や懲役刑などの刑事罰の対象となり得ます

また、連鎖販売取引の体裁を取っていても、実質は無限連鎖講(ねずみ講)であると判断された場合には、契約が無効になるだけでなく、懲役刑や罰金刑が科されることがあります

知らない間に特商法違反の取引をすることがないよう、契約の内容や報酬の条件などには十分にご注意ください。

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