はじめに

労災事故や業務起因性のある疾病が発生した場合、従業員は労災保険給付とは別に、会社に対し安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求を行うことがあります。
企業側としては、労災認定がなされたからといって、直ちに民事上の損害賠償責任が認められるわけではありません。
本記事では、実務上の主要な反論類型を解説します。
1. 安全配慮義務違反を争う場合

会社がまず検討すべきは、そもそも当該事故の発生について、会社に安全配慮義務違反があったといえるかという点です。
労災認定されたからといって、会社が当然に民事上の賠償責任(安全配慮義務違反)を負うわけではなく、あくまで、個別具体的な事情から会社の責任の有無及び程度が判断されます。
安全配慮義務違反が認められるためには、危険の「予見可能性」と「結果回避可能性」が必要とされています。
ただし、実際上は、職場で起きた事故である以上、これらが否定されるケースは稀です。
もっとも、「会社の責任が全く無い」とはならないとしても、会社が適切な安全管理や指導を行っていたことは、後述する過失相殺(労働者側の過失)の主張をする際に有利な事情となり得ます。
加えて、これまでの会社の管理体制をみなすことで、再発防止策の検討にも役立ちます。
2. 事故と傷病の因果関係を争う場合(特に精神疾患の場合)
次に重要となるのが、業務と傷病との因果関係です。
とりわけ、うつ病などの精神疾患では、業務以外の私的要因(家庭問題、既往症、性格傾向など)が影響しているケースも少なくありません。
企業側としては、
- 業務負荷の客観的程度(労働時間、業務量、役割)
- 発症前後の私生活上の出来事(仕事以外の要因)
- 医師の診断内容や意見書
などを整理し、業務が主要な原因とはいえないことを主張します。
検討の際には、厚生労働省が公表している認定基準が参考になります。
3. 過失割合や損害額を争う場合
仮に会社の責任が一部認められる場合でも、過失割合や損害額を適切に争うことは極めて重要です。
3-1. 過失割合
- 危険行為に対する従業員自身の不注意
- 安全指示に反する行動
- 自己判断による無理な作業
などがあれば、従業員側の過失相殺を主張できます。
3-2. 損害額
労災保険給付は、民事上の損害賠償額から控除(損益相殺)されます。
また、
- 休業損害の算定基礎
- 後遺障害の等級・逸失利益の期間
- 慰謝料額の水準
についても、怪我の状態や裁判例に照らして適切な金額であるかを精査し、過大請求に対してはきちんと反論する必要があります。
4. まとめ
労災請求を受けたとき、どのような方針で争うか、また、どのような証拠を集めれば良いのか、については、専門的な知見も踏まえて迅速かつ適切な判断が必要となります。
対応や争い方を誤ると、過大な金額を支払うことにもなりかねません。
労災の問題が生じた場合は、できるだけ早期の段階で弁護士等に相談し、アドバイスを受けながら対応することで、後に請求される賠償金額を減らせる可能性もあります。
弊所では、労災問題に対して、被害者との交渉や事実確認・証拠収集のみならず、必要であれば、労基署への対応のサポートや事故の関係者からの事情聴取まで、包括的なサポートを行っています。
従業員の労災問題でお困りの際は、是非一度、弊所にご相談ください。
お問い合わせはこちら












