はじめに

弁護士荒木俊太

近年、ハラスメントの問題が世間的にも注目されています。

某テレビ局で起きたハラスメントについて、会社の対応の是非が連日報道されていますが、会社経営者や役員にとって、この問題は対岸の火事ではありません。

ハラスメントについて会社が責任追及されることは、容易に起こり得ます。

今回は、会社がハラスメントの予防措置を取らなかったり、ハラスメントが発覚したときの対応を誤ったりした場合に、どのような法的責任を負うのかについて説明していきます。

会社の安全配慮義務とハラスメントの関係

ハラスメント

会社は従業員に対して、労働契約に伴う「安全配慮義務違反」を負っているとされています。

裁判では、ある労働者のある行為がハラスメントに該当するとされた場合、それを防ぐ体制を取っていなかった、あるいは、ハラスメントの事実を認識しながら適切な対応をとらなかったことを理由に、会社が被害労働者に対する安全配慮義務に違反したと認定されることがあります。

つまり、会社がハラスメントを見逃したり放置したりしていると、被害にあった従業員から、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求を受けることになります。

損害賠償となると、慰謝料だけでも少なくない金額を請求されますし、たとえば、被害者がハラスメントを理由に退職したり、重度の精神疾患となって働けなくなったりした場合には、慰謝料の他に、給料相当額(休業補償)を請求されることもあります。

ハラスメントが発覚した際、会社としては事態を穏便に済ませたい気持ちは分かりますが、その対応方法を誤ると、被害労働者からの賠償請求という形で、後から大きな代償を支払うことにもなりかねません

ハラスメントが発覚したら

ハラスメントが発覚したときにどう対応すべきか、はケースバイケースですが、以下の点は意識しておくとよいでしょう。

早急な事実確認・証拠保全

  • 具体的な事実を聞く。(意見や主張ではなく。)
  • ハラスメントの当事者以外(同じ職場の同僚、ハラスメントを相談された友人など)から先に話を聞き、客観的な視点から見た事実関係をある程度把握したうえで、当事者の聞き取りを行う。
  • ハラスメントの証拠(指導日報、当事者の日記、録音等)が残っていないかを確認し、残っている場合は早急にデータ保存。

被害者のフォロー

  • ハラスメントが発覚したことによる二次被害は絶対に避けるべき。
  • 暫定的な措置としての部署異動なども検討する。

加害者への処分の検討

  • 被害者の主張のみを鵜呑みにしない。
  • ※被害者の主張だけで加害者を処分すると、それが事実でなかったときに、会社が加害者から損害賠償請求を受けることも
  • 解雇や出勤停止など重い処分は特に慎重に。
  • 安易に判断はせず、ハラスメントの程度が著しいことが客観的に分かるかどうか、十分に調査・検討する。
  • 判断に迷う場合は、第三者(弁護士など)を入れて調査すべき。

専門家への早めの相談

弁護士荒木俊太

ハラスメントが発覚したら、専門家(その分野に強い弁護士や社労士など)に早期に相談することも重要です。

ハラスメント対応は初動が非常に重要であり、ここの対応を誤ると、事態の悪化や不要なリスクの増大につながることもあります。

専門家の意見を聞きつつ、一つずつ対応することで、後々の大きなリスクを回避することができます。

最後に

弊所には、労務関係の知識が豊富な弁護士が多数在籍しています。

ハラスメントの対応に困っている、ハラスメントの予防体制を見直したい、という企業様は、ぜひ一度ご相談ください

  • 荒木俊太弁護士
  • この記事を書いた弁護士

    荒木 俊太(あらき しゅんた)
    たくみ法律事務所 福岡オフィス所属
    佐賀県神崎郡出身。九州大学法学部、九州大学法科大学院を経て、弁護士登録。運送業者を始めとする複数の企業を顧問弁護士として支援し、労災、問題社員、誹謗中傷など、中小企業を取り巻く法律問題に幅広く関与。

お問い合わせはこちら

お急ぎの方
電話予約はこちらをタップ

お問い合わせはこちら

企業側・使用者側専門の弁護士にお任せ下さい新規予約専用ダイヤル24時間受付中!メールでの相談予約