弁護士壹岐晋大

事業者としても一般消費者としても、日常生活で約款を目にする機会は意外と多いのではないでしょうか。

顧客が不特定多数となる事業では、顧客との間で個別に契約書を作成せず、定型の規約等によって契約内容を定める取引形態が多々あります。

しかし、約款を隅々まで読んでいる人は実際に少数です。

皆様の中にも

駐車場の看板をよく見たら規約の中に「無断駐車を発見した場合、罰金10万円を申し受けます」と書いてあった

WEBサービスを利用する際に、「利用規約を確認しました。」にチェックを入れたが、実際は読まずに契約した

といった経験がある方がいらっしゃるかもしれません。

今回の民法改正で、不特定多数の者との間で行う定型的な取引に関して「定型約款」の規定が新設されました

民法改正に伴う契約書チェックプラン

約款の法的拘束力

契約

通常の取引においては、個別に契約書にサインすることで契約内容について合意が成立します。

では、一方的に規約を示すことでその内容について法的な拘束力が生じるのでしょうか。

今回の民法改正で、署名などの方法で個別に合意がなされていない場合でも、規約(定型約款)の個別の条項について合意したとみなす、つまり法的拘束力を生じさせるための要件が定められました。

これを「組入要件によるみなし合意」といいます。

改正民法では、次の1、2のいずれかを満たせば定型約款の内容も合意したものとみなされることとなります。

  1. 定型約款を契約の内容とする合意をしたとき
  2. 定型約款準備者が予め定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき

1は、契約で合意したものと似た状況となるのでわかりやすいですが、2の「相手方に表示」とは、具体的にどのように行うのでしょうか。

表示の方法

例として、WEBサービスであれば契約締結画面において利用規約を表示する、対面での取引であれば目に付く場所に掲げておくといった方法が考えられます。

もっとも、「表示」といっても定型約款を全て記載しなければいけないわけではなく、定型約款を契約内容とすることが表示されていれば問題ありません

言うまでもないことですが、利用者が定型約款を確認したい場合には開示しなければいけません。

すべてが有効?

では、利用規約に記載さえすればあらゆる条項が有効となるのでしょうか

改正民法第547条の2第2項では、

相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であって、その提携取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの

については、みなし合意の効果が生じないとされています。

少々分かりづらいですが、利用者を一方的に害するものについては、合意したとは判断されないということです。

利用者に過大な違約金を定めている場合や、定型約款作成者の故意・重過失でも損害賠償責任が免責される場合などが典型例です。

また、商品の売買契約が、自動的に継続的な商品の購入となっていたり、別のサービスを受けなければならないとされている場合も例として挙げられます(村松秀樹著「定型約款の実務Q&A」)。

約款を変更する場合

一般的に利用規約等では、サービス提供者側による契約内容の変更が予定されており、変更内容について個別に利用者に同意を得ずに変更されることが多くあります。

改正民法第548条の4では、個別に同意を得ずとも、定型約款を変更することで、変更後の定型約款の内容について合意したとみなす条件が、以下の通り定められています。

  1. 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき
  2. 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、本条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無およびその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき

1の場合、利用者にとって利益となる変更が問題になる場面は少ないので、2の場面が主に問題となるでしょう。

合理性の判断

合理性の判断は難しいですが、たとえば対価が変更された場合では、その変更理由が何なのか、サービスと比較した費用が過大となっていないかなどを検討することになるでしょう。

そして、変更規定があることが合理性を認める事情の一つとして挙げられていることからすれば、あらかじめ変更規定を定めておくことは必要となるでしょう。

民法上の定型約款の定義

悩み

ここまで改正の概要を説明しましたが、そもそも「定型約款」の具体的な定義とは何でしょうか

定型約款は少々分かりづらいですが、「ある特定の者が、不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの」を「定型取引」とした上で、「定型取引」において、契約の内容とすることを目的として、その特定の者により準備にされた条項の総体をいいます。

つまり、定型約款に該当するかどうかを判断するにあたっては、まず、定型取引に該当するかどうかを判断することになります。

契約書が定型約款になる?

BtoBの取引における契約書は、契約書の雛形などが用いられている場合はあるにせよ、対価や契約内容において当事者間で交渉がなされることがほとんどです。

したがって、契約内容が画一的であることが双方にとって合理的とはいえず、定型約款に該当しないケースが多いでしょう。

これに対し、保険契約における保険約款やコインロッカーの使用約款、WEBサービスにおける利用規約などは定型約款に該当するケースが多いでしょう。

最後に

今回の民法改正により、事業で用いられている定型的な取引条項について

  1. 改正民法上の定型約款に該当するのか
  2. 該当するとしたら、組入要件を満たしているのか
  3. 不当条項規制がないか

などを確認する必要があります。

判断が難しいものも多いので、迷われたときにはぜひ弁護士にご相談ください。

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