弁護士小林

近年、都市部の不動産価格が高騰しており、それに伴って賃貸借契約上の賃料の相場も増額しています

福岡県内でも地価や賃料相場の上昇が続いています。

国土交通省から発表された基準地価によると、平成29年7月1日時点で福岡市城南区鳥飼7丁目の地点が13.2%上昇して上昇率が全国2位となりました。

福岡県内で不動産業を営む会社や不動産オーナーにとって大きな悩みは、不動産価格の上昇によって過去に設定した賃料が相場より安くなってしまうことです。

可能であれば更新中の賃貸借契約において賃料増額をして適正な利回りを確保したい、と思われることでしょう。

しかし、借地借家法では賃借人の権利が手厚く保護されているため、賃貸借契約を締結した後に賃料増額を実現することは決して容易ではありません。

この記事では、賃料増額請求の流れと、賃料増額を実現するためのポイントを弁護士が解説します。

賃料増額請求の流れ

賃料増額請求

賃料増額請求は、通常、

  1. 当事者同士の協議
  2. 調停
  3. 訴訟

という3つのステップで行います。

当事者同士の協議

当事者同士の協議で賃料増額の合意ができれば、その合意に基づいて賃料増額することができます。

賃料増額の幅をどうするか、増額のための経過期間をどうするかについて制限はなく、当事者の合意によって自由に決めることができます。

しかし、現実には賃借人が一度合意した賃料の増額に応じるケースは少ないでしょう。

調停

交渉がまとまらない場合には、調停の申し立てをすることになります。

賃料の増減請求においては、「調停前置主義」といって訴訟を提起する前に必ず調停を申し立てなければなりません。

調停では、裁判官に民間の調停委員を加えた調停委員会が双方の当事者の事情を聞き、話し合いでの解決を目指す手続です。

そこで合意が可能であれば調停が成立し、賃料が増額されることになります。

賃料増額に関する調停や裁判は不動産の所在地を管轄する簡易裁判所が管轄となりますので、もし問題となっている物件が福岡市にあれば福岡簡易裁判所に申立てを行います。

訴訟

話し合いでもまとまらない場合には、調停不成立として訴訟を提起することになります。

話し合いによる合意の見込みがないと判断された場合には、直ちに調停不成立となり訴訟に移行するケースもあります。

たとえば、賃貸人が賃料増額を請求し、賃借人が逆に賃料減額を請求した場合です。

訴訟に移行した場合、一般的に鑑定の申立てがなされます。

鑑定を申し立てた場合、裁判所より鑑定人(不動産鑑定士)が選任され、不動産賃料の価格についての鑑定結果が出されます。

一般的には、この鑑定結果に基づいて和解や判決がなされます。

1回目の期日で鑑定の申立てがされ、スムーズに鑑定人が選任されたケースでは、早ければ調停の不成立から5、6か月程度で判決が出されます

賃貸借契約における賃料増減額特約の効力が争われた場合や、増額の合意をしたかなど事実関係が争われた場合には長期化することもあります。

賃料増額請求のポイント

では、賃料増額を実現させるためにはどうすればよいのでしょうか

賃料が不相当となったことを立証する

借地借家法には、次の場合に賃料の増額請求ができると規定されています。

賃料が「土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったとき」

つまり、賃料増額が認められるためには、

  1. 租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった
  2. 経済事情の変動により賃料が不相当となった
  3. 近傍同種の建物の借賃に比較して賃料が不相当となった

のいずれかを立証する必要があります。

適正な賃料の算定方式には、積算(利回り)方式、スライド方式、差額配分方式、賃貸事例比較方式などさまざまな方法があり、通常はこれらの方式に基づいて試算した賃料を比較しながら適正な賃料を求めます。

したがって、それぞれの方式の算出結果がなるべく高額になるようにできるだけ多くの資料を提出しておくことで、調停や裁判を有利に進めることができます。

任意の交渉で賃料増額を実現させたい場合でも、客観的な証拠を揃えて交渉にあたることで相手を説得できる可能性が高くなります。

現在の賃料が安すぎるということを借主に十分納得してもらえれば、引越しをするよりも賃料増額に同意した方がリスクは小さいと判断してもらえるかもしれません。

場合によっては、交渉段階で不動産鑑定士に依頼して不動産鑑定書を作成してもらうことも検討するべきでしょう。

当事者間の事情の変化を立証する

賃料増額に際しては客観的な事情だけでなく当事者間の個別の事情も考慮されます。

したがって、賃貸借契約締結の後に当事者間の事情が変化し、賃料増額が相応であるとされるような関係になったときは、それを立証する証拠を提出することで、増額が認められやすくなります。

裁判例には、貸主と借主の間に親密な近親者としての関係があったために、賃料が近隣の相場よりも低く定められていたが、後にそのような関係が解消された場合には賃料増額が認められると判断したものがあります。

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