ローパフォーマー従業員とは

弁護士荒木俊太

一般的に「ローパフォーマー」とは、パフォーマンスが低い、すなわち、周囲に比べて業務遂行能力が低い従業員や会社が期待する成果を出せない従業員のことを指します。

もちろん、従業員によって職務遂行能力や業務成果にはばらつきが発生することは致し方ありません。

しかし、著しく能力が低かったり、全く結果を出せない従業員を放置することは、会社全体の生産性を下げるばかりでなく、周囲の優秀な社員へも悪影響を与えます。

また、このような従業員に仕事を与えないことは、パワーハラスメントにもなりかねません

この記事では、ローパフォーマーへの対応の際の基本的な考え方をご紹介します。

ローパフォーマーへの対応の基本的な考え方

会社の代表者や上司からすると、能力が低い従業員には早めてほしい、と考えるのが本音でしょう。

しかし、適切なプロセスを経ずに従業員を辞めさせてしまうと、不当な解雇であるとして、後から多額の損害賠償金や慰謝料を請求される危険性があります。

従業員をどのように辞めさせるか(辞めさせてよいか)は、ケースバイケースでの判断が必要です。

以下、対応を考える際の基本的な考え方を紹介します。

能力不足の程度が著しいかどうかを、客観的・合理的な基準で判断する

単に「平均的な労働者より成績が低い」という程度では、解雇を基礎づける事由にはなりません。

裁判例でも、解雇が有効となるのは、「平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがない時でなければならない」と判示したものがあります。

能力不足や結果未達成については、できる限り客観的な評価基準により判断するべきです。

恣意的な判断は、違法とされるリスクが高くなります。

日々の指導により能力改善を図る(図ったことを残しておく)

能力不足に基づく解雇の有効性判断においては、「指導により従業員の能力改善を目指したといえるか」が重要な要素となります。

再三の指導や注意にも関わらず、能力改善が見られない場合には、その後の改善の見込みも乏しいと判断されやすくなります。

指導内容や従業員の対応状況は、記録に残すことが重要です。

証拠がなければ、法的に不利になる可能性があります。

他部署への異動を検討する(従業員の能力に合う部署がないか)

「複数の部署を経験させても、周囲に比べて能力不足が明らかである」という場合には、解雇にも合理的理由があると判断されやすくなります。

なお、能力不足かどうかを判断するには、数ヶ月ほど様子を見る必要があります。

異動による改善の可能性を見極めることも、適切な対応の一環です。

すぐに解雇に踏み切らず、他の選択肢を模索する姿勢が重要です。

複数人の目で評価する

指導担当者が一人だけだと、判断が恣意的になりやすく、評価される従業員も納得しづらくなります。

複数人の目で公平な評価を行うことが、トラブルを防ぐ鍵となります。

第三者的視点を交えることで、判断の正当性が高まります。

従業員との合意により、円満に辞めてもらうことを目指す(合意退職)

解雇と合意退職のうち、円満な解決を目指すならば、合意退職が望ましい選択肢です。

裁判で解雇が無効とされた場合、長期間の賃金支払いや慰謝料負担が生じるリスクがあります。

従業員の納得を得たうえで合意を形成することが重要です。

無理な説得や圧力は、実質的な解雇とみなされるおそれがあります。

最後に

能力不足の従業員への対応は、会社としても大きな神経と労力を使うものです。

ハラスメントとならないよう注意しつつ、日々の指導を継続しなければなりません。

また、合意退職に向けた交渉には、法的な知識と慎重な姿勢が求められます。

対応に迷う場合は、専門家である弁護士に相談するのが最善です。

弊所には、労務関係に強い弁護士が多数在籍していますので、お困りの際は、お気軽にご連絡ください。

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